音楽 CLASSIC

匠の森

不滅の指揮者・演奏家

20世紀は「指揮者」と「演奏家」の時代と言われる。
神がかった才能と魔物のような個性を持った表現者が続々と現れ、聴衆を魅了した世紀。
ここではそのうち何人紹介することが出来るかわからないが、
なるべく濃い密度で、音楽の「匠」たちのプロフィールと遺産を紹介していきたい。
文●阿部十三

  • クナッパーツブッシュが作り出す音楽は構えが大きい。テンポは概して遅め。しかし緊張感を失うことはない。響きは重厚でがっしりとしているが、時折えもいわれぬ透明感を帯び、聴き手に息を呑ませる。スタジオ録音の代表盤は、ワーグナーの『ワルキューレ第一幕』『ヴェーゼンドンク歌曲集』、コムツァーク2世の「バーデン娘」などが入った名演集。全てオーケストラはウィーン・フィルで...

    [続きを読む](2011.05.10)
  • ハンス・クナッパーツブッシュは1888年3月12日、エルバーフェルトに生まれた。幼い頃から音楽に親しみ、12歳の時に児童オーケストラを指揮、いつしかオペラ指揮者を夢見るようになる。親からは音楽の道に進むことを反対されるが、1908年ボン大学で学業を修めることを条件に、ケルン音楽院に通う許しを得る。音楽院ではブラームスと親交のあったフリッツ・シュタインバッハに...

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  • 豪放磊落な巨人、クナッパーツブッシュに関するエピソードはたくさんある。そのうち最も広く知られているのは、練習嫌いのクナ(クナッパーツブッシュの愛称)が本番当日になってようやくリハーサルにやって来てオーケストラに挨拶をした後、「この作品は皆よく知っている。私も知っている。ではまた夕方お会いしましょう」と言い残して去ったという話だろう。「練習嫌いってことは怠け者...

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