タグ「マーラー」が付けられているもの

  •  『広島・長崎における原子爆弾の影響』は、1945年9月から10月にかけて広島・長崎の様子を撮った記録映像である。製作したのは日本映画社。原爆投下の爆心から数百メートル地点、1キロ地点、2キロ地点、5キロ地点...とそれぞれの場所における被害状況をカメラにおさめ、物理学、生物学、植物学などの面から原爆の影響を細かく検証している。 この映像はGHQに没収され、...

    [続きを読む](2022.07.17)
  • 才気煥発な音楽の化身 レナード・バーンスタインはアメリカが生んだ最初の世界的指揮者である。そのキャリアは華々しく、指揮者としてだけでなく、作曲家、ピアニスト、教育者としても大きな足跡を残した。派手な動きが多い指揮に関しては好き嫌いが分かれるが、そこから放たれる音楽の力は絶大なもので、多くの聴衆を魅了した。彼こそは才気煥発な音楽の化身、全身音楽家であった。 コ...

    [続きを読む](2022.01.04)
  • これは天上の生活なのか マーラーの交響曲第4番は1899年から1900年にかけて作曲され、1901年11月25日、作曲者自身の指揮により初演された。第2番「復活」、第3番と同じように、もともと歌曲集『少年の魔法の角笛』に収録されていた曲を転用していることから、3作まとめて「角笛3部作」と呼ばれることもある。 交響曲第4番の最終楽章に使われたのは、『少年の魔法...

    [続きを読む](2021.02.05)
  • マックス・リヒター『ブルー・ノートブック』2004年作品 2003年2月14から16日にかけて、世界中の都市の目抜き通りを老若男女が埋め尽くす、記録的規模のデモが行われた。集まったのは言うまでもなく、イラク戦争を阻止したいという想いで結ばれた人々だ。東京でも明治公園を出発点に2万人以上が行進したものだが、ロンドンでの参加者は約100万人に上り(150万もし...

    [続きを読む](2020.10.21)
  • そして最後の審判が始まる マーラーの交響曲第2番「復活」は、1888年から1894年にかけて作曲され、1895年12月13日、作曲者自身の指揮により初演された。全5楽章の長大な交響曲で、第1楽章は20分以上、第5楽章は30分以上の演奏時間を要する。全体で80分を超える演奏は珍しくない。それでも人気が高く、この作品を聴いてマーラーに夢中になったという人は非常に...

    [続きを読む](2020.06.04)
  • 新しい交響曲の創始者 ハンス・ロットの交響曲第1番は、完成から100年以上演奏の機会に恵まれず、1989年にようやく初演された。ロットの名前はマーラーの伝記等にも載っているし、ブルックナーやマーラーがその才能を讃えた言葉も記録されている。誰も知らない作曲家だったわけではない。にもかかわらず、その代表作である交響曲第1番が人々の耳に届くまでにはあまりにも長い時...

    [続きを読む](2018.10.13)
  • ワルターと私 ブルーノ・ワルターはクラシック音楽を聴きはじめた人の前に、モーツァルトやベートーヴェンの作品の指揮者として現れる。そして、ライナーノーツやレビューに書かれている「温厚な人柄」「モラリスト」といった人物評により、大指揮者には稀な人格者のイメージを植え付けられる。これはワルター受容の一つのパターンと言えるだろう。しかし、そんな人物像を前提にして音源...

    [続きを読む](2016.12.11)
  • 「9番」にふさわしいもの 「作曲家は交響曲第9番を書いた後、生き延びることができない」という迷信を恐れるあまり、マーラーはもともと「第9番」として作曲していた『大地の歌』に番号を与えなかった。そして本来ならば10番目にあたる次の交響曲を「第9番」とすることで、生命の危険を回避することができると考えた。いわゆる「第九のジンクス」である。 この逸話に私はずっと疑...

    [続きを読む](2016.11.27)
  • クレンペラーの音楽 木管を強調させるやり方は、クレンペラーが意識して行っていたことである。何しろ「木管がきこえるということがもっとも重要なのです」とまで言い切っているのだ。その傾向が昔からあったことは、1928年に録音されたR.シュトラウスの「7つのヴェールの踊り」を聴くとわかる。これは極めて貴重な音源だ。録音年代を忘れるほど音質が良いこともあり、ぞくぞくす...

    [続きを読む](2016.03.21)
  • マーラーの影響 若い頃、オットー・クレンペラーはマーラーの交響曲第2番「復活」をピアノ用に編曲して暗譜で演奏し、作曲者に認められた。そして、そのとき書いてもらった推薦状のおかげで、プラハの歌劇場の指揮者になることができた。1907年のことである。「すぐれた音楽家クレンペラー氏をご推薦申し上げます。氏はまだ若年にもかかわらず、すでに経験豊かであり、指揮者の職に...

    [続きを読む](2016.03.19)
  • 美しきパノラマ ブルックナーの交響曲第6番は1879年9月に着手され、1881年9月3日に完成した。初演は1883年2月11日に行われたが、第2楽章と第3楽章が演奏されただけで、全曲が披露されたのは作曲家の死後、1899年2月26日のことである。その際、指揮を務めたのはグスタフ・マーラーだった。 1879年から1881年といえば、交響曲第4番「ロマンティック...

    [続きを読む](2015.09.01)
  • 世界が未だかつて耳にしたことがないようなもの マーラーの交響曲第3番は全6楽章、演奏時間に90分以上を要する大作である。ただ、渋滞感や退屈な部分は皆無で聴きやすく、最終的には聴き手を大きな幸福感で包み込む。あらゆる雑念を吸収し、世界を高みへと押し上げるような第6楽章の美しさが、この作品に存在する全ての要素を肯定させ、悲しみも苦しみも疲れも忘れさせるのだ。これ...

    [続きを読む](2015.02.25)
  • 扉 アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの作品では、扉や門が凶兆を告げるシンボルとして用いられる。それは、単独でメガフォンを取った初の長編映画(それまでは共同監督で長編を数本撮っていた)『犯人は二十一番街に住む』(1942年)から一貫している。この映画は酒場のドアが開くカットで始まり、その後、殺人事件が次から次へと起こる。次作『密告』(1943年)では、墓地の門が...

    [続きを読む](2015.02.19)
  • 人生の頂点にいる間に書かれた交響曲 マーラーの交響曲第5番は、1901年から1902年の間に作曲され、1904年10月18日に初演された。作曲開始から初演までの間に、マーラーはアルマ・シントラーと出会い、結婚した。長女マリア・アンナ、次女アンナ・ユスティーネも授かった。この時期のマーラーは、仕事にも恵まれていた。ただ、だからといって第5番が陽気で明快な作品か...

    [続きを読む](2014.11.07)
  • 青春の苦難と栄光 マーラーの交響曲第1番は1884年から1888年にかけて作曲され、1889年11月20日にブダペストで作曲者自身の指揮により初演された。 一時、この作品は全5楽章2部構成の「交響詩」として演奏され、それぞれの楽章には聴衆の理解を得るための標題が付けられていた。第1部は「青春の日々から。花、果実、いばらなど」。これは第1楽章「終わりなき春」、...

    [続きを読む](2014.02.12)
  •  ウィレム・メンゲルベルクは19世紀末から20世紀半ばにかけて活躍したオランダの大指揮者であり、トスカニーニ、ワルター、フルトヴェングラーを含むいわゆる「四大巨匠」の一人である。彼は必要とあらば楽譜上の指示を自己流に変更し、お馴染みの作品から瞠目すべきニュアンスを引き出して音楽的効果を上げる達人だった。そのロマン主義的なスタイルと、細部の表現に徹底してこだわ...

    [続きを読む](2013.12.11)
  • 「DSCH」の宣言 ショスタコーヴィチの交響曲第10番は、1953年の夏から秋にかけて作曲され、同年12月17日に初演された。1953年といえばスターリンが亡くなった年である。1948年以降、「ジダーノフ批判」にさらされていたショスタコーヴィチが8年ぶりに交響曲を作曲したのは、おそらく圧政者の死に触発されたためだろう。ただ、この作品をスターリンとスターリンの...

    [続きを読む](2013.08.24)
  • 比類なき至芸の結晶 作品の美質を引き出す術は、オーケストラの美質を引き出す術と無関係ではあり得ない。シューリヒトはそのことを心得ていた。彼は固定スタイルを団員たちに押しつけるタイプの指揮者ではなかった。オーケストラが変われば演奏も変わる。ただ、いかなる方向からでも作品の核へと迫ろうとする、その姿勢は変わらない。 ウィーン・フィルとの組み合わせでは、1960年...

    [続きを読む](2013.07.19)
  • 「悲劇的」を超えて 一番最初に聴いたマーラーの交響曲は第7番だった、という人はどれくらいいるのだろう。おそらくそこまで多くないのではないか。私の場合、誰にいわれたわけでもなく、何のガイドブックを読んだわけでもなく、結果的に第7番を最後に聴いた。そして、大袈裟にいえば、これまでほかの交響曲に親しんできたのは、第7番の世界に入るための準備であったかのような気持ち...

    [続きを読む](2013.02.12)
  •  オッテルローが遺した録音で最も有名なのは、ベルリオーズの「幻想交響曲」だろう。名盤といわれるレコードやCDがたくさんある作品だが、その中にあって1951年6月に録音されたオッテルロー盤は、ほかの指揮者と比べて遜色ないどころか、もう60年以上、ひときわ眩しく光っている。「幻想」を聴き込んでいる人ほど、オッテルローの聴かせ方のうまさに唸らされているようである。...

    [続きを読む](2013.01.17)
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