2017年9月アーカイブ

  •  中川信夫は怪談映画で名を馳せた監督だ。その代表作『東海道四谷怪談』(1959年)は日本映画史上屈指の大傑作と言われている。緊張感あふれる脱獄・逃亡シーン(ちょっとしたレズシーンもある)で息もつかせぬサスペンス映画『女死刑囚の脱獄』(1960年)を撮ったのも中川監督である。私はこの二作を同時期にビデオで観て、「こんなにすごい監督がいたのか」と興奮したものだ。...

    [続きを読む](2017.09.25)
  • スクリッティ・ポリッティ『キューピッド&サイケ85』1985年作品 信条に反するからと頑なにアンダーグラウンドに留まり、限られたファンに向けてラディカルなメッセージを発信するのもいい。でもそれを続けるだけでは限界があるわけで、例えばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの場合は、このままでは世界は変えられないと悟って、反資本主義を掲げながらもメジャー・レーベルと...

    [続きを読む](2017.09.18)
  • 青春と抒情 ガブリエル・フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番は1875年から1876年にかけて作曲され、1877年1月27日に国民音楽協会の演奏会で、マリー・タヨーのヴァイオリンにより初演された。伴奏を務めたのは作曲者自身である。「期待を遥かに越える成功」(フォーレの言葉)を収めたこの初演の後、師であるサン=サーンスは、「子供が成長して自分の手元を離れてゆく...

    [続きを読む](2017.09.10)
  •  『新帰朝者の日記』では、西洋化の現状について、「日本の学者は西洋と違つて皆貧乏ですから、生活問題と云ふ事が微妙な力で其の辺の処を調和させて行くのです」と妥協的なことを言う者に対し、帰朝者は「いつの世も殉教者の気概がなけりやア駄目です」と突っぱねる。その際、作者は謙遜してこの言葉を「書生の慨嘆」と表現した。たしかに「殉教者の気概」は大げさな表現だが、その後の...

    [続きを読む](2017.09.02)