2015年8月アーカイブ

  • セイント・エティエンヌ『フォックスベース・アルファ』1991年作品 音楽に関して英国が素晴らしいのは、いまだギターを弾いて歌っていないと「ホンモノ」と認めなかったり、ポップ・ミュージックは子供向けの音楽と見做されているようなところがある米国と違い、アーティスティックで大人の鑑賞に堪える、「ホンモノ」のポップ・ミュージックを作るミュージシャンが、大勢いることだ...

    [続きを読む](2015.08.26)
  • 『心の旅路』の監督 まだ映画監督という存在にさほど注意を払っていなかった頃、感動したり印象に残ったりした映画が、後で調べてみると、ことごとく同じ監督の作品だったという偶然に驚いたことがある。その監督がマーヴィン・ルロイだ。『哀愁』(1940年)、『心の旅路』(1942年)、『キュリー夫人』(1943年)、『若草物語』(1949年)ーーどれも私が映画鑑賞に耽り...

    [続きを読む](2015.08.20)
  • 完全無欠 ベートーヴェンの交響曲第5番は、1804年から1808年の間に作曲された。キンスキー=ハルムの作品目録によると、交響曲第3番「英雄」完成後に着手したが、交響曲第4番、ピアノ協奏曲第4番、ヴァイオリン協奏曲などの創作のため中断、1807年に再び取りかかり、1808年の早い時期に書き上げたという。作曲に費やした時間が実質的にどれくらいなのかは不明だが、...

    [続きを読む](2015.08.13)
  • レイ・ヴァンチュラと彼の仲間たち「すべて順調でございます、侯爵夫人」(1935年) これは映画音楽の大家ポール・ミスラキが若い頃に書き上げた一風変わったシャンソンである。ミスラキは1908年生まれ。パリ音楽院では映画好きで有名だった作曲家シャルル・ケクランに師事していた。映画ファンの弟子が映画音楽を書くという成り行きになったわけである。しかし映画の世界で名を...

    [続きを読む](2015.08.05)
  • 最上の魂とは何か ヘラクレイトスが最上としたのは、「火」=乾いた魂である。それはいわば目覚めた人間の姿であり、「自己を認識すること、そして思慮を健全に保つこと」(断片116)ができる状態を示している。「水」=湿った魂は、飲酒の快楽を指しているようだが、性の快楽や感情的になって流す涙も含まれるだろう。「土」は固まっているもの。湿りを帯びた後に来たるべき死、現世...

    [続きを読む](2015.08.01)