2016年6月アーカイブ

燃えるような神秘 アントン・ブルックナーが交響曲第9番の作曲に着手したのは、第8番の第1稿を書き終えたすぐ後(1887年)のことである。本腰を入れて筆を進めたのは1889年からで、1894年11月30日に第3楽章のアダージョまで完成させた。ブルックナーは病気に悩まされながらも、終楽章の構想を練り、最後の力をふりしぼってこれを書き上げるつもりでいたが、その時間...
[続きを読む](2016.06.26)
カルチャー・クラブ『カラー・バイ・ナンバーズ』1983年作品 ソングライターたちの中には、歌詞の内容を説明したがらない人が多い。プライベートなことは話したくない、自分の体験に照らして好きに解釈して欲しい......といった理由を挙げて。確かに曲を楽しむ上で背景事情を知る必要はないけど、子供時代に呑気に歌っていた曲の本当の意味(たいがいドラッグ&セックス絡みだ...
[続きを読む](2016.06.17)
「続悪魔」は、神経衰弱が悪化しているところから始まる。「癲癇、頓死、發狂などに對する恐怖が、始終胸に蟠つて、其れでも足らずに、いやが上にも我れから心配の種を撒き散らし、愚にもつかない事にばかり驚き戦きつつ生をつづけて居」る佐伯は、反面、「高橋お傳」「佐竹騒動妲妃のお百」といった毒婦物の講釈本を読み、恐怖に敏感な神経を麻痺させるような血なまぐさい幻想を堪能し...
[続きを読む](2016.06.11)
谷崎潤一郎の初期作品「悪魔」と「続悪魔」は、強迫観念に支配された人間の心理を真正面から扱った作品である。前者は明治45年2月の『中央公論』(原題は旧字で「惡魔」)、後者は大正2年1月の『中央公論』(原題は旧字で「惡魔(續篇)」)に掲載された。「The Affair of Two Watches」(『新思潮』明治43年10月)にも「激しいHypochondr...
[続きを読む](2016.06.04)