2021年3月アーカイブ

  • テイラー・スウィフト『フィアレス』2008年作品 自分が聴き親しんできたアルバムがあって、リリースから10年以上経った頃に「ちょっと納得いってないからレコーディングし直すわ」とアーティストに言われたら、多分不可解な気持ちを抱くに違いない。しかもそれが、高く評価されて大ヒットを記録した作品なら尚更のこと。完璧じゃない部分も含めて愛されているなら、それで良いので...

    [続きを読む](2021.03.25)
  • 怪奇風味の短編小説 谷崎潤一郎の『人面疽』は、『新小説』(1918年3月号)に掲載された怪奇風味の短編小説である。不気味な映画の謎に迫るサスペンスフルな話でありながら、特異な美意識が注ぎ込まれていて、その味わいは神秘的とも猟奇的とも言える複雑なものとなっている。後に映画製作に関わることになる谷崎は、当初これを映画化の第一作目として考えていた。怪異を起こす映画...

    [続きを読む](2021.03.13)
  • 二十代のたくましい表現力 ベートーヴェンの交響曲とピアノ協奏曲は、第1番と第2番が古典派らしい優美さと明るさを持つ点で共通している。両作品ではこの作曲家の独創性はまだ表面化しておらず、第3番以降の作品よりも影が薄い。作風もアイディアも穏健で、激しい叫びも胸を潰すような重さもない。しかし、これらは旋律とリズムの力のみで勝負していた青春時代のたくましい表現力の結...

    [続きを読む](2021.03.03)