2021年9月アーカイブ

  • グレアム・コクソン『ハピネス・イン・マガジンズ』2004年作品 1990年代半ばに起きたブラーVSオアシス合戦は、もちろん捏造とまでは言わないけど、メディアが面白おかしく煽ってエスカレートさせた騒動であって、デーモン・アルバーンとノエル・ギャラガーがゴリラズの曲で仲良く共演している四半世紀後の世界から振り返ると、バカバカしいことこの上ない。実際にはどっちも好...

    [続きを読む](2021.09.24)
  • 「河内屋」 広津柳浪は善悪を明確に分けず、勧善懲悪を期待させない。「河内屋」にはその特徴がよく出ている。「河重」の異名を持つ重吉とお染は愛のない結婚をした夫婦である。お染は、かつて重吉の弟の清二郎と惚れ合っていた。その3人が同じ屋根の下に住んでいる。そこへ重吉の愛人お弓が住み着くようになる。お染と、お染を純粋に想い続ける清二郎は哀れな被害者だ。誰もがそう思う...

    [続きを読む](2021.09.15)
  • 「今戸心中」 広津柳浪は「悲惨小説」の代表的な作家である。「悲惨小説」は「深刻小説」とも呼ばれ、日本の文壇で自然主義が猛威を振るう以前の明治20年代末から30年代前半にかけて流行した。内容は文字通り重たく、救いのない結末のものが多い。登場するのも、先が見えない生活をしている遊女、病人、醜夫、醜女、知的障害者といった具合である。 ただ、柳浪の小説はいたずらに重...

    [続きを読む](2021.09.11)
  • 協奏曲は軽快に、華麗に モーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲は1929年から1931年にかけて作曲され、1932年1月14日、マルグリット・ロンの独奏により初演された。奇しくもラヴェルは1929年に「左手のためのピアノ協奏曲」を書くように依頼され、そちらの作曲も行っていた(完成したのは「左手」の方が早い)。これまでピアノ協奏曲を完成させたことのない作曲家が、晩年...

    [続きを読む](2021.09.03)