2015年3月アーカイブ

ベル・アンド・セバスチャン『天使のため息』1996年作品 特定の町を感じさせる音楽、というのがある。自分にとって1960〜70年代のニューヨークのイメージはロックを通じて形作られた気がするし、ザ・スミスの曲はマンチェスターが背景になければ成立しないし、ほかにもたくさんの例が思い浮かぶが、スコットランドのグラスゴーもやはり音楽との縁が深い町。シンプル・マインズ...
[続きを読む](2015.03.29)
成熟したヴィルトゥオーゾの遺産 ナタン・ミルシテインはバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」全曲を2度録音している。1967年に出版されたヨアヒム・ハルトナックの『二十世紀の名ヴァイオリニスト』には、ミルシテインが演奏した「シャコンヌ」について、「彼はこの作品の構築とポリフォニーを、透明な追跡可能なものにしている。旋律の内包するものは彼の...
[続きを読む](2015.03.24)
衰えることを知らぬ人 演奏技術について語るとき、昔より今の方が格段に進歩しているとか、水準が上がっているという言い方をする人をよく見かける。しかし、全体の平均値が上がっても、突出した存在が現れるとは限らない。その証拠に、ナタン・ミルシテインやウラディミール・ホロヴィッツに匹敵するようなヴィルトゥオーゾは、ほとんど現代に存在しない。才能は平等なものではなく、分...
[続きを読む](2015.03.20)
ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『アンリエットの巴里祭』(1952年)に忘れられないシーンがある。誕生日の7月14日、洋服店に勤めているアンリエットは、恋人で報道カメラマンのロベールと会えるのを楽しみにしている。しかし、ロベールはデートにやって来て早々、「社長に呼ばれた」と言い、アンリエットを置き去りにする。社長のことは口実で、本当はサーカス団の花形リタに...
[続きを読む](2015.03.13)
『悪の華』は1857年に出版された詩集である。シャルル・ボードレールは当時36歳。それまでにも小説、詩、評論を発表しており、ウジェーヌ・ドラクロワ、エドガー・アラン・ポーの賛美者として一部に知られる存在であったが、『悪の華』によりセンセーションを巻き起こし、後に「これより重要な詩人はいない」(ポール・ヴァレリー)と言われるほどの存在になった。詩人が世を去る...
[続きを読む](2015.03.07)
マリー・ラフォレ「マンチェスターとリヴァプール」(1966年) マリー・ラフォレは『太陽がいっぱい』(1960年)のヒロインとして有名だが、歌手としての評価も非常に高く、10枚以上のスタジオ・アルバムを発表している。「マンチェスターとリヴァプール」は初期の代表曲で、作詞はエディ・マルネイ、作曲はアンドレ・ポップが担当、1966年に発売されてヒットした。今日で...
[続きを読む](2015.03.03)