2015年5月アーカイブ

ザ・スペシャルズ『スペシャルズ』1979年作品 先日(2015年5月7日)行われた英国の総選挙は労働党の惨敗という意外な結果に終わり、18年ぶりの保守党単独政権が発足したわけだが、本ファーストを含むザ・スペシャルズの3枚のアルバムがこの選挙を目前にして再発されたのは、偶然ではなかったと思う。人種や国籍、宗教、経済的格差......様々な断層線に沿って裂け目が...
[続きを読む](2015.05.28)流転のリアリティ 端折った作品といえば、ロシアに漂着した元禄商人・伝兵衛を描いた長編『異郷』(1943年9月)も同様である。これは織田作之助が想像力を自在にめぐらせた二部構成の大河ロマンで、第一部では伝兵衛がイギリス人との決闘で勇者になり、ペテルブルク一番の美女ナターシャが伝兵衛への恋に懊悩する。この展開はいかにも大衆好みだ。彼が日本人として常に恥ずかしくな...
[続きを読む](2015.05.23)
生活のリアリティ 織田作之助は19歳の時、三高の『嶽水会雑誌』に発表した初の評論「シング劇に関する雑稿」の中で、「単なる観念でも、象徴でもない、リアリティとは、我々の認識せるものの姿である。これを表現するところにリアリズムの頂点がある」と書いている。この考えは織田が常に意識していた汎用的指針であり、登場人物の思想や信条よりも生活について細かく書くのは、彼にと...
[続きを読む](2015.05.16)
1940年代のイギリス映画界で、ジェームズ・メイスンは絶対的なカリスマであった。屈折した性格の役が似合い、陰のある悪役を演じても、エキセントリックな変質者を演じても、正義の看板を背負った登場人物たちより魅力を発散して、観る者に肩入れさせる。なめらかで艶のある声、ニヒルな笑み、ノーブルな物腰を武器に、主導権をとってしまうのだ。危険と言えば危険な魅力である。 ...
[続きを読む](2015.05.09)
天才の自信と閃き ロベルト・シューマンのピアノ協奏曲は、1841年に書かれた「ピアノと管弦楽のための幻想曲」に手を加え、2つの楽章を追加したものである。完成したのは1845年のこと。初演日は1846年1月1日、独奏は妻のクララ・シューマンが務めた。 管弦楽の扱いに関しては、ピアノ曲や歌曲にみられる精度が足りないと言われることが多いシューマンだが、すでに交響曲...
[続きを読む](2015.05.02)