2016年2月アーカイブ

恋してはいけない美女に恋したファウストの悲劇 リリ・ブーランジェは女性として初めてローマ賞グランプリを獲得し、1918年に24歳の若さで亡くなった作曲家である。幼い頃から病弱だったようで、姉のナディアによると、「彼女は自分の寿命が短く、限られた時間しかないことを自覚していた。今こうしてそれを語る私たちよりも遥かに冷静に、自らの死を予知していた」という。 父エ...
[続きを読む](2016.02.25)
序 ルイス・ブニュエルは、破壊者ないし挑発者というイメージの枠内で論じられることが多い映像作家である。その映画はしばしば常識を吹き飛ばす危険物とみなされ、反権威主義的な立場から賞賛される。しかし、そうやって形成されるブニュエル像に、私は物足りなさを覚える。シュルレアリスムの方法を応用して論理的整合性を破壊したとか、インモラルな描写をちりばめてキリスト教的権威...
[続きを読む](2016.02.17)
ビースティ・ボーイズ『イル・コミュニケーション』1994年作品 「Cultural appropriation」なる言葉がメディアでさかんに飛び交うようになったのは、2012年のアダム・ヤウクの急死を受けてビースティ・ボーイズが活動を停止したあとだったと思う。直訳すると「文化的流用」。自分が属さないカルチャーの要素を、歴史的背景などへの配慮や敬意を欠いた形で...
[続きを読む](2016.02.11)
難易度の高さだけでなく グレン・プラスキンの『ホロヴィッツ』に、この作品に関する興味深いエピソードが載っている。それによると、ウラディミール・ホロヴィッツは20代の頃、セルゲイ・ラフマニノフのことを「若い私にとっての音楽の神様」と呼び、渡米時に会う機会を得たいと熱望していたという。一方、ラフマニノフもホロヴィッツの噂を聞き、興味を示していた。そして、1928...
[続きを読む](2016.02.02)