2017年6月アーカイブ

  • 女性像のパターン ジョン・スタージェスは男性を描くのがうまい。この点に異論を挟む人はいないはずだ。『大脱走』など、タイプの異なる男性像がそれぞれ細かく造型されていて、男性群像劇の最高傑作と呼びたいくらいである。モテモテのヤンキーというイメージがつきまとうウィリアム・ホールデンが、『ブラボー砦の脱出』で険のある堅物を好演しているのも、スタージェスが彼からベスト...

    [続きを読む](2017.06.25)
  • はじめに ジョン・スタージェスは西部劇や戦争映画で名を馳せた娯楽映画の巨匠で、不屈の男たちを描いた作品で高い評価を得ていた。代表作は『荒野の七人』(1960年)と『大脱走』(1963年)。この2作だけでも、強い個性を持つ役者が大勢顔を揃えている。スティーヴ・マックイーンは言うまでもなく、ジェームズ・コバーンやチャールズ・ブロンソンのように後年大スターになった...

    [続きを読む](2017.06.23)
  • スージー・アンド・ザ・バンシーズ『カレイドスコープ』1980年作品 初めて目にしたのは、レコード屋に並んでいたアルバムのジャケットだったのか、『NME』や『Melody Maker』の誌面だったのか、曲を聴く前にまず、〈SIOUXSIE〉という謎めいた名前にものすごく強烈なインパクトを感じたことを覚えている。そもそも読み方が分からなくて、ネイティヴ・アメリカ...

    [続きを読む](2017.06.15)
  • 狂気の表現 ガエターノ・ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』は、1835年9月26日にナポリ・サン・カルロ劇場で初演され、大成功を収めた。すでに『アンナ・ボレーナ』『愛の妙薬』『ルクレツィア・ボルジア』で知られていたこの作曲家の名前は、『ルチア』でオペラ史の数ページを華々しく飾るものになったと言える。後半には、プリマドンナの高度な表現力と超絶技巧が求めら...

    [続きを読む](2017.06.06)
  •  高村光太郎は1945年5月に岩手の花巻に疎開して同地で終戦を迎え、10月から太田村山口に建てられた小屋に住み、7年の月日を過ごした。花巻に来たのは、東京のアトリエが4月の空襲で罹災し、宮沢賢治の弟に招かれたからだが、そのまま留まったのは本人の意思である。その小屋は「高村山荘」として現在も残っていて、套屋によって保護されている。 高校卒業まで約10年間岩手に...

    [続きを読む](2017.06.03)