2019年7月アーカイブ

天才探偵の登場 高木彬光のデビュー作『刺青殺人事件』で神津恭介が登場するタイミングは完璧だった。密室で他殺死体が見つかり、その後も残虐な殺人が続き、謎が謎を呼び、警察もお手上げ状態となり、ページ数も残すところ4分の1になろうかという時、この美貌の天才探偵が突然登場し、あっけなく密室の謎を解き、真犯人の正体を暴いたのだ。これ以上おいしい登場の仕方はない。謎解き...
[続きを読む](2019.07.27)
BBCレディオフォニック・ワークショップ『BBC Radiophonic Workshop - A Retrospective』2008年作品 80年以上の歴史を誇る、ロンドンのBBCメイダ・ヴェイル・スタジオと言えば、BBC交響楽団の拠点であり、BBCラジオの伝説的セッションの数々が録音された英国の文化的ランドマークだ。1958年から40年にわたってその一...
[続きを読む](2019.07.25)
1920年生まれの監督 ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール主演の『ヘッドライト』(1956年)は、初老のトラック運転手と若いウェイトレスの悲恋物語で、溢れる詩情と哀感が胸を打つ傑作だ。アルヌールのファンには、ただでさえ魅力的な彼女のことをたまらなく愛おしく見せる作品として記憶されている。涙や溜息でじめじめしそうな題材だが、過剰な表現をせず、変にベタ...
[続きを読む](2019.07.13)
自分の好きな作品を紹介し、おすすめの演奏を挙げる時、ルドルフ・ケンペの名前を出していることが少なくない。若い頃は極度の激しさ、奈落の底の暗さ、えぐるような鋭さを求めがちで、過剰な表現に走らないケンペに惹かれることは稀だったが、心身を満たす充実感を味わいたいという気持ちが強くなっている今、何度も聴きたくなる演奏となると、この人の録音に食指が動くのだ。 過剰で...
[続きを読む](2019.07.04)