2019年12月アーカイブ

血となり肉となる文学 中島敦の『光と風と夢』は、作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンの日記という体裁で書かれている。しかし、その言葉はあくまでも中島自身のもの、彼の思想ないし信条の投影である。「私は、小説が書物の中で最上(或いは最強)のものであることを疑わない。読者にのりうつり、其の魂を奪い、其の血となり肉と化して完全に吸収され尽すのは、小説の他にない」 ...
[続きを読む](2019.12.28)
ザ・キンクス『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』1969年作品 『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』というフレーズを見て、2019年末現在の英国と結びつけずにいられないのは筆者だけではないと思う。何しろ12月半ばの総選挙で保守党が想定外の大勝利を収めてEU離脱は確実となり、スコットランドでは独立派のスコットランド国民党が議会を独占し、...
[続きを読む](2019.12.20)
ロシアの人気女優というと、アナスタシア・ヴェルチンスカヤとリュドミラ・サヴェーリエワが思い浮かぶ。2人はほぼ同時期に第一線で活躍し、来日したこともあり、日本での人気も高かった。どちらも清純派のイメージだが、ヴェルチンスカヤの方が意志の強さを感じさせる顔立ちをしている。 ヴェルチンスカヤの出演作の中で最も知られているのは、グリゴーリ・コージンツェフ監督の『...
[続きを読む](2019.12.13)
ブラームスの「田園」 ブラームスの交響曲第2番は1877年に作曲され、同年12月30日に初演された。指揮者はハンス・リヒター、オーケストラはウィーン・フィルである。初演は大成功を収めた。以来、その人気の高さは変わっていない。ブラームスの交響曲は4作品あり、いずれも傑作だが、第2番が好きだという人は非常に多い。 完成までに20年以上かかった交響曲第1番とは対照...
[続きを読む](2019.12.03)