2013年7月アーカイブ

『赤い手のグッピー』の潔癖性 戦時下のフランスで本格的に監督デビューし、大きな注目を集めた天才といえば、ほかにロベール・ブレッソンとアンリ=ジョルジュ・クルーゾーがいる。21世紀の今日に至るまでのフランス映画史を見渡しても、際立って個性的かつ異常な才能を持つ3人がほぼ同時期に世に出てきた、というのは興味深い。その中で、ベッケルは「犯罪映画」を得意にしながらも...
[続きを読む](2013.07.31)
遺作にして最高傑作と評される『穴』 ジャック・ベッケルは第二次世界大戦中の1942年に監督デビューし、ヌーヴェルヴァーグ真っ只中の1960年に53歳で亡くなった。18年の間に発表したのは13作品。そのほとんどが傑作として評価され、多彩な作風でゴダールやトリュフォーなど若き映像作家たちに刺激を与えた。実際のところ、彼の代表作をひとつに絞ることは不可能に等しい。...
[続きを読む](2013.07.29)
これほどまでに美しい...... 「ラシーヌの雅歌」はガブリエル・フォーレの初期の合唱曲である。彼はニデルメイエール宗教音楽学校の生徒だった20歳の時(1865年)にこれを提出し、作曲科で一等賞を獲得して卒業した。学生時代の作品とはいえ、その音楽の純粋さ、清澄さ、美しさは、まぎれもなくフォーレ独自のもの。巧みな四声書法がジャン・ラシーヌの詩と融和し、高貴なハ...
[続きを読む](2013.07.25)
比類なき至芸の結晶 作品の美質を引き出す術は、オーケストラの美質を引き出す術と無関係ではあり得ない。シューリヒトはそのことを心得ていた。彼は固定スタイルを団員たちに押しつけるタイプの指揮者ではなかった。オーケストラが変われば演奏も変わる。ただ、いかなる方向からでも作品の核へと迫ろうとする、その姿勢は変わらない。 ウィーン・フィルとの組み合わせでは、1960年...
[続きを読む](2013.07.19)
至高の世界へと導く術 カール・シューリヒトは、作品の核に凝縮されている美質を腕力ではなく知の力で表へと引き出す達人だった。録音の際は、細かい書き込みをしたオーケストラのパート譜を一式抱えて臨んでいたようだが、その表現がトリビアリズムに陥ったり、頭でっかちになることはなかった。しばしば「淡々としている」とか「誇張がない」と評されるからといって、冷たいとか物足り...
[続きを読む](2013.07.17)
モーニング娘。は単純にグループとして魅力があり、鉱脈のように「人財」で潤っている。メンバーの卒業や加入で体制が変わっても、バランスが崩れることはない。そのバランスも、いかにも整然とした感じではなく、ちょっと分かりにくいものである。しかし、時間が経つにつれ、「すでに卒業したメンバーたちがまだ現体制に残っていたら」という仮定が、徐々に考えにくいものになってくる...
[続きを読む](2013.07.13)
ビョーク『ポスト』1995年作品 『ポスト』のカラフルなアートワークで一番に目をひくのは、ビョークが着ている赤と青の縞に縁どられた白いジャケットではないかと思う。デジタル時代の今ではアナクロに感じられる、エアメールの封筒を模したこの紙製ジャケットは、英国人デザイナーのフセイン・チャラヤンの作品。もちろんランダムに選んだわけじゃない。本作が登場した...
[続きを読む](2013.07.10)
2013年に入ってからモーニング娘。は2枚のシングルを発表し、いずれもオリコンチャートで1位を獲得し、「11年ぶりの2作連続1位」ということで話題になった。現在は道重さゆみをリーダーに、譜久村聖と飯窪春菜をサブリーダーに据え、10人体制で活動しているが、12期メンバーのオーディション中なので、秋ツアーの頃には増員されているのではないかと予想される。その新し...
[続きを読む](2013.07.06)
歳月の重さと理念の重さ ヨハネス・ブラームスが交響曲第1番を完成させたのは1876年。「2台のピアノのためのソナタ」を交響曲に改作しようとして挫折したのが1855年頃なので、20年越しの念願成就ということになる。むろん、その間ずっと交響曲にかかりきりだったわけではないが、自らが世に出す最初の交響曲のことをブラームスはかなり重く考えていたようである。ベートーヴ...
[続きを読む](2013.07.01)