2014年5月アーカイブ

  • モリッシー『ヴォックスオール・アンド・アイ』1994年作品 モリッシーは「4」が付く年に復活する。それはもはや否定しがたい事実だ。そもそも、彼がフロントマンを務めたザ・スミスがデビュー・アルバム『ザ・スミス』を発表した年からして1984年だったわけだが、それから10年が経った1994年には、バンドはとっくに解散済み。間髪入れずにソロに転向していたモリッシーは...

    [続きを読む](2014.05.29)
  •  2014年からモーニング娘。は「モーニング娘。'14」と改名し、「ミュージックステーション」をはじめとする音楽番組や朝の情報番組のほか、CMにも出演するようになり、メディアに登場する機会が驚くほど増えた。コンサート会場でも女性の観客が多くなり、新たなファン層が加わったことをうかがわせる。これは劇的な変化といっていいだろう。 そもそも17年間続けていなければ...

    [続きを読む](2014.05.24)
  • チェロの聖典 チェロの聖典といわれるJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲は、ケーテンの宮廷楽長として活躍していた1720年頃に完成したとみられている。つまり、無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータが書かれたのとほぼ同時期である。自筆譜は今日に至るまで見つかっていない。 「1720年頃の作曲説」は、無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの自筆浄書譜に「通奏低音...

    [続きを読む](2014.05.21)
  •  ウェルギリウスの本をランダムに開き、そこに書かれてある言葉から啓示を得る。これを「Sortes Virgilianae(またはSortes Vergilianae)」とよぶ。ウェルギリウスの籤という意味である。まだビブリオマンシーすら知らなかった頃、私にこんな言葉があることを教えてくれたのはグレアム・グリーンの小説『喜劇役者』だった。 グリーンが書物占いを...

    [続きを読む](2014.05.17)
  • 夜のシーンを撮らせたら右に出るものなし キャロル・リードは夜を撮るのがうまい監督である。モノクロでは暗がりのシーンの映像が重くなりがちだが、リードの場合、むしろ精彩を帯びるから面白い。照明の加減が絶妙で、なんでもない魔法のように光と影を扱い、ひんやりとした夜風が感じられそうなほど雄弁な映像を作り出すのだ。初期の作品『星は見下ろす』(1940年)からもその特性...

    [続きを読む](2014.05.13)
  • ザ・トイズ「ラヴァーズ・コンチェルト」(1965年/全米No.2) クラシック音楽が原曲になっているポップスは数多あるが、「ラヴァーズ・コンチェルト(A Lover's Concerto)」ほど原曲にまさるとも劣らぬ魅力を感じさせる曲を私は知らない。歌詞もアレンジも秀逸で、何度聴いても飽きることなく、草原に吹く風のようにみずみずしいフィーリングで胸を満たして...

    [続きを読む](2014.05.08)
  • 巧緻なるデフォルメ パウル・ヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』は1943年8月に完成し、翌年1月にアルトゥール・ロジンスキ指揮のニューヨーク・フィルにより初演された。アメリカ時代、ヒンデミットは『キューピッドとプシュケ』、『エロディアード』、『シンフォニア・セレーナ』などを作曲しているが、それらの中で『ウェーバーの主題による交響的変容』は最も...

    [続きを読む](2014.05.02)