2014年12月アーカイブ

愛のため、自由のために ベートーヴェンにとって初めてのオペラ作品『フィデリオ』は、1805年11月20日にアン・デア・ウィーン劇場で初演され、3日間で取りやめになった。「期待を完全に裏切る出来」(『デア・フライミューティゲ』1805年12月26日付)とまで書かれたが、当時ウィーンがフランス軍に占領され、裕福な音楽愛好家たちが疎開していたことや、聴衆の大半がド...
[続きを読む](2014.12.30)
『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角オリジナル・サウンドトラック』1986年作品 1980年代の米国に第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンをもたらした要因としてよく挙げられているのは、ご存知、1981年に開局したMTV。米国勢とはひと味異なる、ヴィジュアル・コンシャスな英国のニュー・ウェイヴ・アーティストたちが、MTV経由で幅広くその魅力をアピールでき...
[続きを読む](2014.12.25)
八雲恵美子といえば、戦前の松竹蒲田を代表するスター女優である。単に美人の枠で括ることが憚られるほどの美人で、「夜光珠の如き美しさ」と評されたこともあるが、映画の中ではしばしばドラマティックな役を演じ、その整った美貌に女性らしい深い情を滲ませて、観客を魅了した。小津安二郎監督の『その夜の妻』(1930年)や『浮草物語』(1934年)を観ても、情熱的な芯を持っ...
[続きを読む](2014.12.19)
モーニング娘。のコンサートに行くときは、毎回新鮮な気持ちで会場へ向かう。何度も観ていれば徐々にルーティンワーク化しそうなものだが、一向にそうならない。常にアップデートされる期待とそれに伴う不安が、決まって私の心を占める。1ヶ月前に観たばかりでも、次のコンサートではどんな風に変わるのか、全く読めない。そして終演後は、「来てよかった。また必ず来よう」という気持...
[続きを読む](2014.12.13)
マグダ・オリヴェロの歌は、その一回一回が絶唱である。全身全霊を注いだ彼女の歌声に耳を傾けていると、私は時折興奮のあまり髪の毛に火がつくような感覚にとらわれる。それくらい歌に対するオリヴェロの没入ぶりは徹底していて、しかも強い伝播力を含有している。世にも稀な美声の持ち主であり、卓越した技術も備えているが、単なる美声の人、技術の人ではない。アドリアーナ・ルクヴ...
[続きを読む](2014.12.08)
リュシエンヌ・ボワイエ「聞かせてよ愛の言葉を」(1930年) 「聞かせてよ愛の言葉を」は、1930年代にフランスでヒットし、日本でも愛されたシャンソンである。私が持っているレコードのジャケットには、「シャンソン・ド・シャルム(魅惑のシャンソン)の代表ともいうべき、こよなくスウィートな愛の歌」と記されている。ただ、メロディーはたしかにスウィートだが、歌詞の方は...
[続きを読む](2014.12.04)