2017年5月アーカイブ

  • もう一人の巨人 ベートーヴェンの交響曲第4番は1806年に作曲され、1807年3月に初演された。かつてシューマンは、有名な第3番と第5番の間に生まれたこの作品を、「北欧の2人の巨人に挟まれた清楚可憐なギリシャの乙女」と呼んだ。美しい呼称である。しかし、第2楽章はともかく、全体的にはベートーヴェンらしい力強さと緊張感をたたえた力作で、その構成も(第5番以上とは...

    [続きを読む](2017.05.29)
  • ゴリラズ『ゴリラズ』2001年作品 ブリットポップを象徴するカップルだったブラーのデーモン・アルバーンとエラスティカのジャスティーン・フリッシュマン。ふたりの破局がブラーの名盤『13』(1999年)のカタリストのひとつとなり、「テンダー」や「ノー・ディスタント・レフト・トゥ・ラン」といった名曲を生んだことはご承知の通りだが、間接的とはいえ、このカップルの別れ...

    [続きを読む](2017.05.18)
  • 次の世代の作曲家として ベートーヴェンの交響曲第1番は、遅くとも1800年3月までに書かれ、同年4月2日に作曲者自身の指揮により初演された。30歳を迎える前にようやく最初の交響曲を完成させたわけだが、これが嚆矢となり、ベートーヴェンは30代の間に第2番から第6番「田園」まで書き上げることになる。 第1番の作風については、ハイドン、モーツァルトの影響から脱し切...

    [続きを読む](2017.05.12)
  •  アナトール・フランスの『神々は渇く』は、フランス革命期の恐怖政治とそれに巻き込まれる人々を描いた歴史小説で、1911年11月から1912年1月にかけて『パリ評論』誌に掲載され、1912年6月に単行本として刊行された。多くの資料に基づいて組まれたそのプロットは老練、緻密な風俗描写は圧巻というほかなく、読者を一人残らず18世紀末の騒乱の体験者にしてしまうような...

    [続きを読む](2017.05.06)