2019年6月アーカイブ

エルトン・ジョン『黄昏のレンガ路』1973年作品 "Follow the yellow brick road!"――映画『オズの魔法使』(1939年公開)の中でジュディ・ガーランド演じるドロシーは、そう叫ぶマンチキンたちに急き立てられて、オズの都エメラルド・シティへと続く黄色いレンガ路を進む。魔法使いの力を借りて家に帰るために。でもやっと辿り着いてみると、実...
[続きを読む](2019.06.24)
男と女の心理の深みに 室生犀星の晩年に連載・刊行された『かげろうの日記遺文』は、それまでに40作以上書かれた「王朝もの」の掉尾を飾る傑作である。1959年に野間文芸賞を受賞した時、銓衡委員の一人、亀井勝一郎は次のように評した。「女びとなるものへの、これほど夢ふかい作品を私は知らない。ちょっと読みにくい文章だが、それが何か薄明のやうな光りを放って、時に執念は凄...
[続きを読む](2019.06.14)
扉の向こうにある宇宙 ブルックナーの交響曲第5番は、緻密に構成された大曲で、骨組みは複雑ながらもがっちりとしている。第7番や第8番などに比べると硬質な感触があるが、その重たい鉄の扉を開けた向こう側に、我々を圧倒する音の世界が広がっている。傑作と評されながらも、とっつきにくいと言われることがあるのは、その扉を開けるのに少し時間がかかるからだ。 各楽章の主題の扱...
[続きを読む](2019.06.04)