2011年12月アーカイブ

眠くても、疲れていても、通勤と退勤の電車の中では読書をすることにしている。本を読まないと、会社と自宅を往復するだけの日常で終わってしまうので、少しでも読んで、ハードで荒んだ現実からは得られないものを吸収しておきたいのだ。2011年の初頭までは比較的時間にゆとりがあったので、帰宅してからもまだ読書をする余力はあったが、会社を移ってからは、家に帰った瞬間に思考...
[続きを読む](2011.12.31)
マリア・ユーディナはスターリンお気に入りのピアニストだった。彼女が録音したモーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、スターリンの求めに応じて演奏されたものである。ただ、ユーディナは舌禍の多い人で、幾度となく当局とやり合っているような女傑だった。スターリンに対しても批判的な言動を繰り返していた。レコードの謝礼を受け取る時、彼女は礼状にこう書いたという。「ご助力を...
[続きを読む](2011.12.27)
だいぶ前の話にはなるが、2010年の5月30日に放送された音楽番組『MUSIC JAPAN』は、女性アイドルグループ特集であった。独特なコンセプトを打ち出しているグループが多く、「女性アイドルシーンは面白いことになっているのだな」と感心しつつ、僕はのんびりと過ごしていた。しかし......彼女たちが現れた瞬間に「すげえ!」と、一気に背筋が伸びたのだ。「彼女...
[続きを読む](2011.12.24)
私がオルネラ・ムーティのことを知るきっかけとなった作品は『スワンの恋』である。これを観たのは20年くらい前。その時は、素敵な女優だなと思いつつも、フォルカー・シュレンドルフの演出が鼻につき、さほど惹かれることはなかった。『チェイサー』、『フラッシュ・ゴードン』、『予告された殺人の記録』といった有名作も、話としては楽しめたし、オルネラの存在感もそれなりに発揮...
[続きを読む](2011.12.21)
悪魔と祈りの音楽 最初の数秒で聴き手に一生忘れられないような衝撃を与える音楽がある。私にとってそういう作品を現代音楽の中から挙げるなら、まずジョージ・クラムの『ブラック・エンジェルズ』に指を屈する。あの出だしを初めて聴いた(というか、食らった)時、目の前できらめくナイフが飛び交っているような錯覚に襲われ、頭がくらくらした。今聴いても衝撃度はさほど変わらない。...
[続きを読む](2011.12.19)
ルポルタージュの開祖とも言われる松原岩五郎の作品は、『最暗黒之東京』以外、ほとんど忘れられている。小説を書いていたこともあまり知られていない。しかし明治時代に松原が小説の分野で果たした役割は決して小さなものではなかった。彼はどんな文学観を持ち、自国の文学や海外の文学をどう摂取し、どのような作品を残したのだろうか。 まずは明治24年(1891年)5月16日に...
[続きを読む](2011.12.17)
ジャクソン・ファイヴ「クリスマスに愛を贈ろう」(1970年) クリスマス・シーズンが近づくと、街角のあちらこちらから、或いはラジオやTVから、これでもか、と様々なクリスマス・ソングが流れてくる。『聖書』の場面に基づいた讃美歌あり、オリジナルのゴスペル・ソングによるものあり、更には、古くから歌い継がれてきた定番のオリジナル・クリスマス・ソング(ビング・クロスビ...
[続きを読む](2011.12.15)
川で遊んでいる友人たちのことを少し離れた所から眺めている少女リーザ。その時、どこからともなくギターの音が聞こえてくる。ほかの友人たちの耳には聞こえていないらしい。リーザはその音に誘われるようにして友人たちから離れ、林の中を歩き回り、やがて小さな滝裏のくぼ地で花柄のギターを弾いているロベルトを見つける。 1971年の映画『ふたりだけの恋の島』のワンシーンであ...
[続きを読む](2011.12.12)
帝国劇場で『ダンス・オブ・ヴァンパイア』を観た。高橋愛がモーニング娘。を卒業後、初めて踏む舞台である。ソロになってから初の舞台が帝国劇場で、演目が人気ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』、しかも帝劇開場100周年記念公演というのはかなり恵まれていると言える。一人の女優として、どんな歌、演技で魅せてくれるのだろうか。私は初日に行くことにした。 「人気ミ...
[続きを読む](2011.12.10)
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』1967年発表 一般的には、アーティストグッズとは、そのアーティストのファンが身に付けるための商品だ。しかし、必ずしもそうとは言えないものも多々ある。例えば、AC/DCのTシャツを着ている女の子を時々見かけるが、「やっぱ『ハイ・ヴォルテージ』だよね!」とか話しかける勇気は僕...
[続きを読む](2011.12.08)
この取り合わせはかなり美味 こんな曲を書く人間が、本当にこの世に生きていたのだろうか。モーツァルトの音楽を聴いて、そういう感慨にとらわれたことのある人はたくさんいると思う。そこまで感じさせる異常な美しさ、深さといったものが、たしかに彼が遺したいくつかの作品にはある。 さらに、モーツァルトの場合、遺された手紙や関係者の証言から推察できる人物像にとらえどころがな...
[続きを読む](2011.12.06)
僕は決して美食家ではない。有名なお店の名前を人一倍知っているわけではないし、グルメ情報をこまめに調べる程の根気はない。しかし、そんな僕が深く愛して止まず、その言葉を発するだけで幸せが口いっぱいに広がるような恍惚を覚えるのが新宿中村屋のインドカリーだ。 新宿中村屋、通称中村屋の存在を知ったのは、小学校5、6年の頃。当時読んだ北杜夫の小説『高みの見物』の中に出...
[続きを読む](2011.12.03)