2012年11月アーカイブ

  • チェボターリの後継者 美貌と美声と才能に恵まれ、究極の才色兼備を体現した名歌手である。早世したマリア・チェボターリの正当な後継者といってもいい。その声は艶があって美しいだけでなく、清潔感があり、しかも聴き手の耳を威圧することなく、ホールの隅々にまで響くような浸透性を備えている。レガートのなめらかさも特筆もので、歌い口に気品がある。そして歌詞の世界を、理智的な...

    [続きを読む](2012.11.28)
  •  ミレーヌ・ドモンジョは、そのキュートなマスクとフォトジェニックなスタイル、そして確かな演技力で人気を集めたフランス女優である。彼女のプロフィールには、必ずといっていいほど「ブリジット・バルドーのライバルだった」とか「バルドーに追いつくことはできなかった」という意味のことが書かれている。しかし、ドモンジョとバルドーではそもそもファンが求めていたものは違ってい...

    [続きを読む](2012.11.22)
  •  戦前にデビューした女流探偵作家の代表的存在でありながら、忘れられたマイナー作家のような扱いを受けていた大倉燁子。その名前が、2011年に『大倉燁子探偵小説選』(論創社)が出版されたことにより、再び一部の人々の口の端に上るようになった。代表作を全て収録しているわけではないが、江戸川乱歩が評価したデビュー作「妖影」や森下雨村を唸らせた「消えた霊媒女(ミヂアム)...

    [続きを読む](2012.11.17)
  • アソシエイツ『サルク』1982年作品「アソシエイツは偉大なグループだった。僕らはみんな真似をしたものだ。ビリーは偉大なシンガーだった。でも僕には真似できなかった。彼は酸素で膨らんだ気球に乗ったカルーソーだったのだ」 これはU2のボノが、1997年に39歳の若さで自殺したビリー・マッケンジーの伝記本『The Glamour Chase』(1998年刊)に寄せた...

    [続きを読む](2012.11.16)
  • シンプルで、愛おしい歌 先日、部屋の片付けをしていたら、2001年から2010年までに行ったコンサートのパンフレットが大量に出てきた。今は仕事の関係もあり、平日にコンサートに行くことはほとんど不可能な状態にあるが、かつては月に何度もホールへ足を運んだものである。パンフレットを整理していると、思い出に包まれ、懐かしい気持ちになる。 その中でひときわ皺くちゃにな...

    [続きを読む](2012.11.11)
  •  モニカ・ヴィッティは1960年代のイタリアを代表する名女優であり、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画を語る上で欠かすことの出来ないミューズである。何かといえばその物憂い存在感や美貌ばかりクローズアップされがちで、真面目に評価されるのはアントニオーニの演出術ばかりだが、これはフェアではない。彼女の表現力や演技力のおかげもあって、アントニオーニの世界が確...

    [続きを読む](2012.11.07)
  •  ラジオが好きだ。番組を聴くのも勿論大好きなのだが、物体としても愛している。四角いボディ、銀色のアンテナ、周波数を表示する窓、金属製の網の向こう側に見えるスピーカーを見ると、胸がキュンとしてしまう。家電量販店へ行った際、僕がときめくのはパソコンでも、スマートフォンでも、デジタルカメラでもない。ラジオ! 災害時の情報収集ツールとして再評価されつつあるとはいえ、...

    [続きを読む](2012.11.03)
  • マリアンヌ・フェイスフル『ブロークン・イングリッシュ』1979年作品 ザ・ローリング・ストーンズとの交わりの中でアイドルから堕ちてゆき波乱万丈の流転の人生を歩んだ女性アーティストが再生の狼煙を上げた1979年の代表作である。 マリアンヌ・フェイスフルは1946年12月29日ロンドン生まれ。17歳でレコード・デビューするや否やフォーク/ポップスのシンガーとして...

    [続きを読む](2012.11.01)