2012年12月アーカイブ

2012年は安部ヨリミの『スフィンクスは笑う』が復刻され、安部公房の「天使」が発見された年である。安部公房が亡くなったのは1993年のこと。訃報に接した当時、私は学生だった。同級生に安部公房の熱狂的ファンがいて、「どれだけ安部公房のことが好きか」という話を延々聞かされたのを昨日のことのように覚えている。 あれからもう20年も経つのか、と時間の隔たりにぞっと...
[続きを読む](2012.12.29)
2012年の11月下旬から12月にかけて東京と大阪で行われ、2013年の頭には京都と名古屋でも開催される〈ポーランド映画祭2012〉。1950〜60年代の作品が大半のプログラムで、ぼくが体験した東京では何回も立ち見が出るほど連日大盛況だったが、その監修者がイエジー・スコリモフスキである。 1938年生まれのスコリモフスキは、1960年代に映画界デビュー。『...
[続きを読む](2012.12.25)
高度な簡潔さ ハイドンの交響曲の中で、個人的に最も愛聴しているのは第88番ト長調「V字」である。有名な第94番ト長調「驚愕」、第100番ト長調「軍隊」、第101番ニ長調「時計」、第104番ニ長調「ロンドン」などもよく聴くが、「V字」にはハイドンの美質がきれいに無駄なく詰まっていて、聴きやすい。簡潔さの中に音楽的内容の充実度と自由度がある。非常に中毒性の高い作...
[続きを読む](2012.12.20)
楽曲のことに関しては、なんだかんだいっても、つんく♂の裁量がユニークな磁場を生んでいる。少なくともモーニング娘。に対する総合的な印象として、そのように見える。ただ、それ以外のことでは、彼のコメントやジャッジにハラハラさせられることが少なくない。プロデューサーの中には、ミスジャッジをしたりトラブルを招いたりしても、全て計算であるかのように思われるタイプがいる...
[続きを読む](2012.12.15)
小栗康平監督の映画は、その完成度の高さで世界的な評価を得ている。これまで発表されたのはわずか5作にすぎないが、いずれも映像というものが持つ不思議な力を感じさせる傑作ばかりだ。とくに『泥の河』と『死の棘』は、今なお映画ファンが熱くなる題材であり続けている。経年感を寸毫も感じさせない。その映像には常に変わらず、静かな磁力、強い磁力がゆらめいている。 『泥の河』...
[続きを読む](2012.12.12)
最近、日常生活の中でモーニング娘。の名前を目にすることが増えてきた。街中にポスターが貼られたり、メジャーな雑誌の表紙を飾ったりしているし、テレビに出演する機会も一時期よりは少しだけ増えた印象がある。電車の中で「モーニング娘。が......」と話している中高生もたまに見かける。「状況が変わった」とまでいいきるのは早計だが、良い形で16年目に入ったとは思う。 ...
[続きを読む](2012.12.08)
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン『レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン』1992年作品 アートというものが時代の産物なのだとしたら、1991年に結成されたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以下RATM)は、1980年代が産んだバンドということになるのだろう。アメリカの1980年代といえば、レーガン〜ブッシュの共和党政権が続き、一気に保守化。福祉を切り捨てて...
[続きを読む](2012.12.07)
音楽が描く宇宙 『惑星』のインスピレーションの源泉は占星術である。1913年、セント・ポールズ女子校の音楽教師だったグスターヴ・ホルストは、劇作家クリフォード・バックス(作曲家アーノルド・バックスの弟)から占星術の話を聞き、心を動かされた。そして、それぞれの惑星が持つ性格や雰囲気を音楽で表現しようと思い立ち、1914年5月からこの壮大な計画に着手した。 私的...
[続きを読む](2012.12.03)