2014年3月アーカイブ

  • 絵画的描写ではなく感情の表出 ベートーヴェンの交響曲の中で最も有名な作品のひとつである第6番は、1808年に書き上げられた。作曲時期は第5番とほぼ同じだが、第5番の大部分の作曲は1807年に行われ、第6番の方は1808年の初春〜夏にかけて集中的に書かれたとみられている。 構想自体はそれ以前から抱いていたようで、1803年から1804年にかけて使用していた「ラ...

    [続きを読む](2014.03.28)
  • INXS『ホエアエヴァー・ユー・アー』1992年作品 今月はINXSにしよう。そう決めるまでは早かった。その理由? さる2014年2月に地元オーストラリアのテレビで彼らを題材にした長編ドラマ『Never Tear Us Apart』が放映されたことを機に、全豪アルバム・チャートに返り咲いて、1・2位を独占。何かと話題になっているのである。 数ある傑作の中から...

    [続きを読む](2014.03.22)
  • 幻想的な超絶技巧曲 モーリス・ラヴェルの『夜のガスパール』は、1908年に作曲され、1909年1月9日に初演された。作曲当初、ラヴェルが意識していたのは、難曲として知られるバラキレフの東洋的幻想曲「イスラメイ」で、これよりも難しいピアノ曲を書くと宣言し、実行に移した。 副題に「アロイジウス・ベルトランの散文詩によるピアノのための3つの詩」とあるように、インス...

    [続きを読む](2014.03.15)
  • 『鉄道員』の魅力 ピエトロ・ジェルミ監督の作品は大きく3つのタイプに分けることが出来る。まずはネオレアリズモの流れを汲んだ初期の社会派映画。このカテゴリーには『無法者の掟』(1948年)、『越境者』(1950年)などが入る。次に、市民生活の哀感を細やかに描いた中期のイタリア風人生ドラマ。この時期の代表作は『鉄道員』(1956年)、『わらの男』(1958年)、...

    [続きを読む](2014.03.10)
  •  ユリアン・シトコヴェツキーは32歳の若さで亡くなったソ連のヴァイオリニストである。彼のヴァイオリンの音色は暗闇を切り裂くような鋭さを持っているが、表現は硬軟自在。時に妖しい色彩を帯びてゆらめき、時に独特の切迫感で聴き手の胸を圧する。瞑目して耳を傾けていると、閉塞した世界の中で、生命力をみなぎらせる人間の息づかいが聞こえてくるようだ。それは絶対的にソ連という...

    [続きを読む](2014.03.05)
  •  礒田湖龍斎(いそだ・こりゅうさい)は鈴木春信の影響を強く受けながら、やがて独自の画風を示した絵師として知られている。もっとも、歌麿、北斎、広重のように誰もが知っているわけではなく、研究書と呼べるものはほとんどないし、日本で湖龍斎展が開かれたという話も聞かない。ただ、代表作の「雛形若菜の初模様」シリーズがテレビ番組で取り上げられたこともあり、湖龍斎に関心を持...

    [続きを読む](2014.03.01)