2014年4月アーカイブ

セルジオ・レオーネが監督し、エンニオ・モリコーネが音楽を手がけたマカロニ・ウエスタンの傑作『夕陽のガンマン』(1965年)には、テーマ曲をはじめ印象的な音楽が何種類も流れるが、就中異彩を放っているのは、懐中時計のオルゴールのメロディーである。西部劇ファン以外にはピンとこないかもしれないが、シャネルのCMにも使用された曲といえば、分かる人もいるだろう。 映画...
[続きを読む](2014.04.27)
協奏曲の録音 ギレリスのピアニズムには確かな造形感があり、胸に響く重量感、輝かしいまでの明晰さがある。しかし、グリーグの『抒情小曲集』で聴くことが出来るしっとりとした味わいと甘美さ、プロコフィエフの「束の間の幻影」で聴くことが出来る胸のすくような跳躍感や諧謔的な表現の巧さもギレリスの特性である。 若い頃(1930年代から1940年代にかけて)の録音を聴くとテ...
[続きを読む](2014.04.23)
ギレリスのプロフィール エミール・ギレリスは多面的な魅力を持ったピアニストである。かつては「鋼鉄のタッチ」と評され、それが彼のイメージを狭めていた節もあるが、遺された多くの録音に虚心坦懐に耳を傾ければ、強靭で決然たる打鍵や猛烈な疾走感だけでなく、音色の美しさやフレージングの柔らかさも持ち味であることが分かるはずだ。 若い頃からギレリスの技術は大きな注目の的と...
[続きを読む](2014.04.21)
ブラー『パークライフ』1994年作品 音楽ムーヴメントの起点を定めるのは得てして難しいもの。1990年代英国のブリットポップがいつ始まったのかという議論も様々ある。中でも有力なふたつの説のうち、ひとつは1992年5月のスウェードのデビュー。そしてもうひとつが、1994年4月の、ブラーの傑作サード『パークライフ』のリリースだ。つまり後者をとるなら今年はちょうど...
[続きを読む](2014.04.16)
「人間は深い淵だ。底をのぞくと目が回るようだ」 アルバン・ベルクの歌劇『ヴォツェック』は1914年に着手され、幾度かの中断を経て1922年に完成した。台本のベースとなっているのは、23歳で夭折した天才劇作家ゲオルク・ビューヒナーの『ヴォイツェック』。この舞台を観たベルクが、オペラ化するために自ら筆をとったのである。 ビューヒナーの劇は、実際にあった出来事から...
[続きを読む](2014.04.11)
『冷血』は1959年11月15日にカンザス州西部のホルカム村で起こった殺人事件をもとに書かれたノンフィクション・ノヴェルである。犠牲になったのはクラター家の4人で、その殺害方法は、喉をかき切る、顔を猟銃で撃ち抜くなど残虐なものだった。 平和な村で、およそ誰の恨みも買いそうにない一家を襲ったのは2人の男、リチャード(ディック)・ヒコックとペリー・スミスである...
[続きを読む](2014.04.05)
歌手であり、俳優であり、活動家 イヴ・モンタンは1991年に70歳で亡くなるまで、主役級の俳優として映画界で活躍し続けた。それと同時に、フランスを代表する名歌手として時折休止を挟みながらステージに立ち、「枯葉」「ルナ・パーク」「バルバラ」「パリで」など数々のシャンソンをヒットさせた。歌手としても俳優としても成功した人は少なからずいるが、彼ほど圧倒的な成功を収...
[続きを読む](2014.04.02)