2014年8月アーカイブ

古の旋法が描く20世紀のメランコリー モーリス・ラヴェルの弦楽四重奏曲は、1902年から翌年にかけて作曲された。初演が行われたのは1904年3月5日。反響は上々で、多くの人がまだ20代の若きラヴェルの才能を称えた。何しろあの辛辣なドビュッシーが「音楽の神と私の名において、君の四重奏曲の一音符たりとも変更してはなりません」と忠告したというから驚くほかない。しか...
[続きを読む](2014.08.25)
ザ・ウォーターボーイズ『ディス・イズ・ザ・シー』1985年作品 さる2014年7月末のフジ・ロック・フェスティバル2日目の昼下がり、デビューから31年を経て初めて、ザ・ウォーターボーイズが日本でライヴを敢行した。厳密にはフロントマンのマイク・スコットが1995年にソロで来日済みで、まあザ・ウォーターボーイズ=マイクみたいなものなのだが、一大事であることに変わ...
[続きを読む](2014.08.21)
ジュリー・クリスティはジョン・シュレシンジャー監督の『Billy Liar』(1963年)で注目された後、同監督の『ダーリング』(1965年)でオスカーを獲得し、デヴィッド・リーン監督の大作『ドクトル・ジバゴ』(1965年)のラーラ役で大きな成功を収めた。キャリアの初期がここまで華やかなものになると、あとは徐々にパッとしなくなるのが通例だが、彼女の場合、そ...
[続きを読む](2014.08.14)
誰もが知る横山光輝の代表作は、『鉄人28号』『伊賀の影丸』『魔法使いサリー』『バビル2世』『三国志』になるのだろうが、単に好きとか面白いという感想をこえて私の記憶にしみついているのは、『あばれ天童』と『マーズ』である。とくに『マーズ』は、中学生だった私を震撼させ、数日間絶望させた漫画として忘れられない。 私が読んだのは秋田書店から出版されたコミックスだが、...
[続きを読む](2014.08.09)
急進性が生む音楽的スリル ベートーヴェンが完成させた9つの交響曲のうち、第8番だけは誰にも献呈されていない。この事実は誰かのために作曲されたわけではないことを意味するのだろうか。それとも献呈する相手がいなくなったことを意味するのだろうか。 作曲時期は1812年。第7番をほぼ書き上げた後、保養地テープリッツ滞在中に着手し、年内に完成させたとみられている(初演は...
[続きを読む](2014.08.04)