2014年10月アーカイブ

  • エレクトロニック『エレクトロニック』1991年作品 2013年のサマーソニック・フェスティバルで、50代突入を目前に本格的なソロ活動を始めた元ザ・スミスのジョニー・マーと、ペット・ショップ・ボーイズが、数時間の差で隣り合うステージに立つと知って、淡い希望を抱いた人が少なからずいたんじゃないかと思う。ジョニーが同年のツアーで毎公演プレイしていたエレクトロニック...

    [続きを読む](2014.10.30)
  • フランスの賢者アロン 最もすぐれたレイモン・アロン論は、すでにこの世に存在する。それはアロン自身の手により完成され、死の年(1983年)に出版された『回想録』である。彼はこの大著をもって自分の生涯を総括した。その記憶力と分析力が死ぬまで衰えていなかったことは、これを読めば分かる。 レイモン・アロンの名前は、ジャン=ポール・サルトルとポール・ニザンの高等師範学...

    [続きを読む](2014.10.25)
  • 文学にかき立てられた情熱 ショパンのバラードは全部で4作品ある。完成時期はまちまちで、第1番は1835年、第2番は1839年、第3番は1841年、第4番は1842年である。いずれもピアノの詩人が遺した傑作として愛されているが、最もポピュラーなのは第1番だろう。ロベルト・シューマンの手紙によると、「あなたが書いたほかのどの楽曲よりもこれ(バラード第1番)が好き...

    [続きを読む](2014.10.21)
  •  マリア・シェルというと、『居酒屋』(1956年)と『女の一生』(1958年)が有名で、絵に描いたような愛らしい瞳とやさしげな口元が妙に哀感をそそるため、「薄幸の女」のイメージが強いかもしれない。たしかに彼女はそういう役を多く演じた。しかし、『Die Ratten』(1955年)を観れば分かるように、彼女の表情や声のトーンは役によって驚くほど変わるし、凄まじ...

    [続きを読む](2014.10.15)
  • ジョルジュ・ブラッサンス「悪い噂」(1952年) 高校生の頃、『シャンソン・ド・パリ』というコンピレーション・アルバムの「第4集」をよく聴いていた。なぜ「第4集」なのかというと、そこに「恋はみずいろ」「枯葉によせて」「華麗なる千拍子」が収録されていたからである。このアルバムの前半5曲を占めるジョルジュ・ブラッサンスの歌には全く関心がなかった。おじさんがギター...

    [続きを読む](2014.10.09)
  • 魅力的なライヴ音源 1975年に椎間板の大手術を受け、1978年に指揮台から落ちて脳卒中に見舞われた後は、健康状態の悪化やベルリン・フィルとの関係悪化(1981年に勃発した「ザビーネ・マイヤー事件」をきっかけに、カラヤンとオーケストラの間には大きな溝が生じた)に悩まされ、それを反映するかのように、統率力が以前よりも緩み、オーケストラの自発性を重んじる傾向が強...

    [続きを読む](2014.10.04)
  • 相反する評価 ヘルベルト・フォン・カラヤン生誕100周年の折、仕事の関係で、私は可能限り伝記や評論に目を通した。この指揮者に関する資料は多すぎるほど多く存在する。賛美に徹したものもあれば、批判に徹したものもある。しかし、そこに記されている評価のポイントは大体において同じである。それを肯定するか否定するかの違いが溝を生んでいるのだ。その最大のポイントは、性格的...

    [続きを読む](2014.10.02)