2015年11月アーカイブ

ばらの使徒たち このオペラを知った十代の頃は、第二幕のオクタヴィアンとゾフィーの二重唱、第三幕のマルシャリンとオクタヴィアンとゾフィーの三重唱、オクタヴィアンとゾフィーの二重唱にばかり惹かれ、第一幕を理解できていなかった。劇的な動きをみせる第二幕や第三幕に比べると、第一幕は心理的であり、取り繕った世界の奥にあるマルシャリンの哀愁をきちんと汲み取れずにいたのだ...
[続きを読む](2015.11.23)
ウィーンの心のオペラ 美しさで徹底的に酔わせるオペラといえば、なんといっても『ばらの騎士』である。あまりにも美しいため、このような音楽がこの世にあることが時折信じられなくなる。しかし、間違いなく『ばらの騎士』は人の手によって生まれたものであり、俗世に属している。そして、私の耳にきこえている。そんな当たり前のことに感謝したくなる。初めて映像で観た17歳のときか...
[続きを読む](2015.11.20)
ダミア「暗い日曜日」(1936年) ハンガリーのピアニスト兼作曲家シェレシュ・レジェーは、ブダペストのレストランでピアノを弾いていた時代にこの曲を書き上げた。1933年のことである。作詞のヤヴォール・ラズロはレストランのオーナーで、レジェーの鬱々として美しいメロディーに厭世的な歌詞をのせた。題名は「悲しい日曜日」。 録音されたのは1935年。パール・カルマー...
[続きを読む](2015.11.15)今はインターネットを通じて、自分と似たような考えを持つ人が匿名の世界に存在することはある程度見て取れる。とはいえ、昔と比べて現実生活における青春の孤独の寄る辺なさにそこまで大きな違いがあるわけではないだろう。16歳の頃、私は誰の話を聞いても共感できない、どんな思想にふれても満たされないという空白を持て余していた。自分の欲しい言葉が具体的にどのようなものなの...
[続きを読む](2015.11.07)