2019年9月アーカイブ

祝典音楽から交響曲へ 「ハフナー」は活力と躍動感にあふれた傑作である。明るい雰囲気が支配的で、陰翳もあるが暗さや切なさのなかに沈むことは全くない。音楽は輝きながら、迷いなく、勢いよく前進する。もともとは祝典のために書かれたという事情も大いに影響しているのだろう。 作曲の経緯はやや入り組んでいる。モーツァルトはまず1776年にザルツブルクのハフナー家の結婚式の...
[続きを読む](2019.09.26)
ネナ・チェリー『ロウ・ライク・スシ』1989年作品 2019年8月から9月にかけて、どういうわけかチェリー家の人々が相次いで日本にやってきた。まずはネナ・チェリーが、夫でプロデューサーのキャメロン・マクヴェイを伴ってサマーソニック・フェスティバルなどで公演。続いて、先頃デビュー・アルバムを発表したネナとキャメロンの次女メイベルがプロモーション来日し、9月半ば...
[続きを読む](2019.09.18)
小倉柳村は明治13年、14年に出版された東京名所絵で知られる絵師である。本名も生没年も素性も明らかになっていない。 『浮世絵師伝』(井上和雄著 昭和6年発行)、『清親と安治』(近藤市太郎著 昭和19年発行)によると、柳村作として伝えられる絵は数えるほどしかない。東京名所絵の「湯島之景」、「浅草観音夜景」、「日本橋夜景」、「愛宕山之景」、「八ツ山之景」、「...
[続きを読む](2019.09.10)
遺書の後に ベートーヴェンが完成させたピアノ協奏曲は全部で5つあるが、短調を主調としているのは第3番のみである。 作品の構想が練られたのは1797年頃。1800年頃にほぼ作曲し終え、そこから手を加えて1803年に完成させたという。しかし一方で、1803年4月5日の初演を迎えるまで、ピアノ部分のスコアはほとんど書かれておらず、ベートーヴェンが即興で演奏したとい...
[続きを読む](2019.09.03)