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  •  ジャック・ティボーのヴァイオリンは甘い音がする。 でもフレージングや強弱の付け方が洗練されているので、べたつかず、すっきりとした後味を残す。古臭いと言われがちなポルタメントやヴィブラートの奏法も上品で優雅、時に官能的な艶を帯び、聴き手を魅了する。 協奏曲を弾く時も、小品を弾く時も、ティボーの解釈には理屈っぽさがない。作曲家に対する大げさな構えも感じられな...

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  • ポピュラーで、画期的な協奏曲 私が最初に聴いた音楽が何なのかは覚えていないが、クラシック音楽というものを好きになる前から、バッハのメロディーは何種類も知っていた。幼少の頃、テレビ、ラジオ、あるいは街中で聴く機会があったのだろう。パッと思い浮かぶだけでも、「G線上のアリア」、「トッカータとフーガ ニ短調」、無伴奏チェロ組曲第1番の「前奏曲」、小フーガ、イタリ...

    [続きを読む](2020.02.06)
  •  アルフレッド・コルトーの演奏は、音楽作品の中に広がる詩的世界を開示する。間の取り方やペダリングが独特で、詩を書くようにピアノを弾いていると言いたくなるほどロマンティックで豊かな音楽性がそこに湧き出ている。解釈とアーティキュレーションに磨きをかけながらも、いざ指が鍵盤にふれるとなった時、きらめく感性が発現し、理屈をこえたところで五線譜の縄から解放された音楽が...

    [続きを読む](2018.01.13)
  • 青春と抒情 ガブリエル・フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番は1875年から1876年にかけて作曲され、1877年1月27日に国民音楽協会の演奏会で、マリー・タヨーのヴァイオリンにより初演された。伴奏を務めたのは作曲者自身である。「期待を遥かに越える成功」(フォーレの言葉)を収めたこの初演の後、師であるサン=サーンスは、「子供が成長して自分の手元を離れてゆく...

    [続きを読む](2017.09.10)
  •  ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリンは聴く者を幸福な気分にさせる。その音は豊潤で、艶やかで、屈託がない。深刻ぶったところもない。心地よさを伴いながら耳の中にすべりこみ、鼓膜に浸透し、全身に行き渡る。深みが足りないとか、精神性に欠けるという人もいるが、根が明るく解放感に満ちたヴァイオリンにそんなものを求めるのは野暮というものである。 1902年8月9日、...

    [続きを読む](2013.05.14)
  •  ジネット・ヌヴーのヴァイオリンは胸を突き刺すような鋭い音で聴く者をとらえて離さない。フレーズのどこを切っても鮮血が飛び散りそうなほど熱い情熱が脈打っている。ただし、エモーショナルで尖った音だけがヌヴーの個性というわけではない。彼女の演奏家としての特性はむしろ、火を噴くような荒々しいパトスの奔出、集中力に支えられた逞しい造型感、油絵のような色彩感が統合された...

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