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  •  イギリス演劇史に名を残す名優、ジョン・ギールグッドが録音した『ハムレット』のレコードがある。何種類かあるようだが、私が持っているのは1957年に吹き込まれたもの。当時、ギールグッドは53歳。さすがに若々しさはないが、その音楽的な声(「絹にくるまれた銀のトランペット」と称えられた)を聞いていると、自然と『ハムレット』の世界に誘われる。ほかの俳優には模倣できな...

    [続きを読む](2013.02.02)
  •  英国演劇界の花形的存在だったラリーが最も意識していた役者は誰か。おそらくそれはジョン・ギールグッドだろう。ギールグッドがラリーのことをどの程度ライバル視していたかは分からないが、少なくともラリーの方には、相手の影響力を敬遠しつつ自身の演技術を追求していた節がある。自伝などを読んでもギールグッドについて書く時の調子には拭いようのないライバル意識が感じられる。...

    [続きを読む](2012.09.12)
  •  「真に偉大な俳優についての話といえば、オリヴィエだね」ーーこれは1949年8月、ラリーの演技に傾倒していた若き名優モンゴメリー・クリフトが『サタデイ・イブニング・ポスト』誌のインタビューで語った言葉である。「真に偉大な俳優」とは、いかにも「ローレンス・オリヴィエ」に似つかわしい。 もっとも、最初から偉大だったわけではない。貧しく、無名だった彼がチャンスを掴...

    [続きを読む](2012.09.10)
  •  言葉を封じ込めようとする力の世界で、エアロンだけは別格的存在として扱われている。彼は言葉を武器にして、相手をとことん挑発する。誰もこの悪魔を黙らせることはできない。彼の邪悪ぶりが最も明確にあらわれているのは、「それだけ凶悪なことをしてきて、後悔していないのか」とルーシアスに問われた後の答えだろう。「後悔してるよ。もっとやっておけば良かったってな。今でも呪っ...

    [続きを読む](2012.09.01)
  • 「俺はいま不意に不可思議な恐怖に襲われた。冷たい汗がにじみ出し、手足がぶるぶる震えている。俺の心は目に見える以上の何かを感じている」 これはシェイクスピアが書いた最も残虐な悲劇といわれる『タイタス・アンドロニカス』の第二幕第三場、タイタスの息子クインタスが発する台詞である。初めてこの戯曲を読んだ時、私は森の場面のページを繰る直前に、クインタスと同じような心境...

    [続きを読む](2012.08.25)
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