2012年2月アーカイブ

  •  ラジオで耳にした曲に恋して、それをカセットに録音して何度も聴いて覚えて、お金を貯めてその曲が入ったアルバムを買いにゆくーー。そんなことを繰り返していたのは今から30年近く前のことだが、ここにきて再び、同じようなことをしている自分に気付いた。全てはBBC Radio 6 Musicのせいだ。2012年3月に誕生10周年を迎えるこの世界一素敵なラジオ局の存在を...

    [続きを読む](2012.02.25)
  • 数々の名盤 名指揮者と呼ばれる人で「ザ・グレイト」を録音(ライヴ録音も含む)していない人は、ほとんどいない。裏を返せば、それだけ指揮者にとって自分の個性、技術、工夫を投影しやすい作品なのだろう。私の手元にも50種近くのCDがあり、我ながらよくここまで集めたものだと呆れている。 中でも愛聴しているのは、以下の5種である。・ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、...

    [続きを読む](2012.02.23)
  • 奇蹟の楽想 シューベルトは31歳で亡くなったが、その短い生涯に人が何年生きても書けないような神韻縹渺たる傑作をいくつも完成させた。途方もない音楽的深度を獲得したそれらの作品は、私たちの心の暗部にまで届き、孤独感や苦悩や渇望と呼応し、調和的な余韻で満たす。作曲家に対して共感以上のもの、友情すら感じさせるような親密さと清廉さがその音楽には潜んでいる。 交響曲第9...

    [続きを読む](2012.02.22)
  •  普段生活している中で、ハロー!プロジェクト関連のトピックを目にしたり耳にしたりすることは稀である。雑誌の表紙で見かけることもほとんどない。そのため、情報を得る時は、自分からあちこちのサイトに取りに行く必要が出てくる。私のような横着者は、できればオフィシャルHPを見て済ませたいのだが、「ここに来れば最新のトピックが揃っている」という感じがしない。結局、情報を...

    [続きを読む](2012.02.18)
  •  フランク・キャプラはアメリカの良心を描き続けた監督といわれる。その楽天的なヒューマニズム、堂々と謳われる正義に、希望や勇気をもらった人は多いことだろう。キャプラの映画では物欲にまみれた金持ちは否定され、貧しい人々の方が心豊かな存在として描かれる。どんな巨悪も小さな正義の前で敗北する。しかし、それが絵空事にしか見えなくなった時、人はキャプラ作品を「卒業」する...

    [続きを読む](2012.02.17)
  • ジョイ・ディヴィジョン『クローサー』1980年作品 圧倒的な孤独。圧倒的な絶望と哀しみ。そしてどこまでも深く冷たい闇。それがこんなにも美しく響く。『クローサー』を聴くのは、落ちるだけ落ちたい時だ、という人は少なくない。「いま抱えているこの1日より先を覗いてみたが、そこにあるのは〈無〉だけ」と、「24アワーズ」でイアン・カーティスが呻くように歌う時、彼の心には...

    [続きを読む](2012.02.16)
  •  大真面目に環境汚染を告発したエンターテイメント大作である。これを「名画」と呼ぶことには躊躇を覚えるが、当時、ここまで大々的かつ直接的に環境問題を取り上げた作品はほとんどなかったのではないか。ただし、後に述べる理由により、今ではなかなか観ることができない。放射能の問題が深刻化している中、今後ますます封印され、観られなくなることが予想される。 上映されたのは1...

    [続きを読む](2012.02.10)
  • 愛の協奏曲 バッハはヴァイオリン協奏曲を少なくとも6作品は書いていたといわれているが、現在伝えられているのは3作品のみである。独奏ヴァイオリンのための2作と、2つのヴァイオリンのための1作だ。これらは1717年から1723年のケーテン時代に書かれたとみられている。このうち2つのヴァイオリンのための協奏曲の作曲年は、ほかの2作より早く、1718年頃と推定されて...

    [続きを読む](2012.02.08)
  •  高校2年の時、学校の図書室で『ニイルス・リイネ』に出会った。なぜ読もうと思ったのかはわからない。知らない作家の作品だし、タイトルにひかれたわけでもない。私はなんとなく手に取り、テスト勉強を中止して、読みはじめた。まさかそれが自分にとってかけがえのない作品になろうとは夢にも思っていなかった。その本は、静かに、深く、確実に、私の心を支配した。他人が書いたものに...

    [続きを読む](2012.02.04)
  • ABC『ルック・オブ・ラヴ』 1982年発表 『ルック・オブ・ラヴ』、原題〈The Lexicon of Love〉――愛の辞典。ニュー・ロマンティックと括られた連中が送り出した数多の作品の中でも、群を抜いてロマンティックだった傑作コンセプト・アルバムは、ずばりそのように命名されていた。ジャケットではジェームス・ボンドよろしくスーツに身を包んだ男が、片手に女...

    [続きを読む](2012.02.03)