音楽 CLASSIC

シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレイト」 [続き]

2012.02.23
数々の名盤

 名指揮者と呼ばれる人で「ザ・グレイト」を録音(ライヴ録音も含む)していない人は、ほとんどいない。裏を返せば、それだけ指揮者にとって自分の個性、技術、工夫を投影しやすい作品なのだろう。私の手元にも50種近くのCDがあり、我ながらよくここまで集めたものだと呆れている。
 中でも愛聴しているのは、以下の5種である。

・ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、ベルリン・フィル(1942年ライヴ)
・ルドルフ・ケンペ指揮、シュターツカペレ・ドレスデン(1950年録音)
・ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ウィーン・フィル(1957年ライヴ)
・サー・エイドリアン・ボールト指揮、BBC交響楽団(1969年ライヴ)
・カール・ベーム指揮、ウィーン・フィル(1975年ライヴ)

SCHUBERT_GREAT_BOULT
 かつては火の粉を散らすようなフルトヴェングラー盤に唖然とさせられ、しびれたものだが、それ以上に最近はボールト盤のみずみずしい生命力に満ちた演奏に惹かれる。こういう演奏を聴いていると、晩年に書かれた深い音楽的内容を持った作品には違いないのに、それでもこれは老いを知らない31歳の天才が書いた青春の交響曲なのだ、と思わずにはいられない。ちなみに、ボールト盤は1969年のライヴ録音。当時この指揮者は80歳だった。にもかかわらず老成というものを感じさせないシューベルトを聴かせる。この人もまた老いを知らなかったようだ。

 天啓のような第2楽章の演奏で最も深甚たる感動を私にもたらしたのは、意外なことに、クナッパーツブッシュ盤であった。テンポを極端に落として弦を濃密に歌わせるその棒さばきは、この指揮者の炯眼の賜物。何度聴いても陶然とさせられる。

SCHUBERT_GREAT_kempe
 ケンペにはミュンヘン・フィルを振った1968年の録音もあり、スケールの大きな美演として知られている。ただ、私自身はこれをあまり聴かない。それよりも1950年に手兵シュターツカペレ・ドレスデンを指揮した演奏の方を好んでいる。直截的だがしなやかさを持った響き、巧まざるアゴーギクで、この大作に真っ向から挑んだ若きケンペの意気が伝わる名演奏だ。これを今まで何百回も聴いてきたため、後年の録音のこなれた表現がやや鼻についてしまう。

 カール・ベーム指揮による「ザ・グレイト」の録音は数種類残っているが、来日ライヴの演奏が抜きん出て素晴らしい。青春の美を噛み締めるような冒頭から耳を奪われる。しかし、困ったことに、この来日ライヴ盤は、今は入手出来ない。ベームの真価を伝える意味でも1975年の来日ライヴ音源は全てリマスターして再発売すべきである。何年か前にはブラ1の大熱演の映像がソフト化されてファンを狂喜乱舞させたが、その後リリースが途絶えている。出せない事情があるのだろうか。お蔵にしまっていても仕方ないと思うのだが。


【関連サイト】
シューベルト交響曲第9番「ザ・グレイト」
フランツ・シューベルト
[1797.1.31-1828.11.19]
交響曲第9番ハ長調 D.944「ザ・グレイト」

【お薦めディスク】(掲載CDジャケット:上から)
BBC交響楽団
サー・エイドリアン・ボールト指揮
録音:1969年8月11日

シュターツカペレ・ドレスデン
ルドルフ・ケンペ指揮
録音:1950年12月1日

月別インデックス