2013年5月アーカイブ

1979年に公開された『サンバーン』はファラ・フォーセットの代表作である。「チャーリーズ・エンジェル」にはなんだかんだいっても3人のヒロインがいるが、これはファラ主演の、ファラの魅力を最大限引き出すために作られたようなロマンティック・サスペンスである。 かつてファラ・フォーセットのことをダイヤにたとえたCMがあったが、それが大袈裟な表現でないことは、映画を...
[続きを読む](2013.05.31)
田中さとみは「スター誕生!」出身の九州美人で、一時期「モーニングサラダ」に出演していたアイドルである。リリースしたシングルは、1984年5月の「私の神様」のみ。作詞は岡田冨美子、作曲は網倉一也である。倉橋ルイ子のアルバム『Rolling 〜哀しみのバラード〜』の5曲目のカバーで、正直、地味な選曲としかいいようがない。ただ、これがよく出来た名曲で、私の記憶に...
[続きを読む](2013.05.25)
20世紀最初のロマンティック・コンチェルト 1897年3月に初演された交響曲第1番が大失敗に終わった後、ラフマニノフが強度の神経衰弱に襲われ、スランプに陥ったことはよく知られている。作曲への自信を失い、創作意欲も失った彼は、様々な治療法を試してみたものの、結局、何の効果も得られなかった。 転機が訪れたのは1900年。友人のすすめでニコライ・ダーリ博士の暗示療...
[続きを読む](2013.05.22)
ザ・キュアー『キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー』1987年作品 「じゃあ次回はまた23年後にね!」と、23年ぶりの来日となった2007年のフジロック・フェスティバルでの公演中に、茶目っ気たっぷりに告げたのはザ・キュアーのフロントマン=ロバート・スミス。なのに、なんのことはない、たった(!?)6年後の今年、彼らはまた同じステージに立つのだが、「こりゃ歴史的一...
[続きを読む](2013.05.18)
ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリンは聴く者を幸福な気分にさせる。その音は豊潤で、艶やかで、屈託がない。深刻ぶったところもない。心地よさを伴いながら耳の中にすべりこみ、鼓膜に浸透し、全身に行き渡る。深みが足りないとか、精神性に欠けるという人もいるが、根が明るく解放感に満ちたヴァイオリンにそんなものを求めるのは野暮というものである。 1902年8月9日、...
[続きを読む](2013.05.14)
レコード・コンサートの愉しみ 過日、今も交流を続けている翻訳学校の元生徒さんから頂戴したお手紙に次のような一節があった。曰く、「レコード・コンサート(初めて聞く言葉です)」。筆者よりかなりお若い彼女にしてみれば、当然ながら聞き慣れない言葉だっただろう。〈レコード・コンサート〉とは、ある空間(家、オーディオ設備の整った一室、またはスタジオなど)で、大音量でアナ...
[続きを読む](2013.05.11)
フィリス・ハイマン『リヴィング・オール・アローン』1986年作品 その昔、R&B/ソウル・ミュージックを専門とする音楽評論家のお歴々が好んで遣っていた言葉のひとつに〈パンチの効いた歌声〉というのがあった。今ではすっかり死語だが、ここで敢えてその言葉を復活させるなら、フィリス・ハイマンはまさしく〈パンチの効いた歌声〉の持ち主だった。〈だった〉と過去形な...
[続きを読む](2013.05.06)社長シリーズ、若大将シリーズ、そしてサスペンスも 杉江敏男は1950年に監督デビューしてから約20年の間に68本もの作品を手がけた東宝娯楽映画の星である。会社の命令により、「芸者小夏シリーズ」「三人娘シリーズ」「お姐ちゃんシリーズ」「社長シリーズ」「若大将シリーズ」「駅前シリーズ」「クレージー作戦シリーズ」といったドル箱映画を確実にヒットさせるべく、杉江は一...
[続きを読む](2013.05.05)
シューベルトやムソルグスキーにもつながる宇宙 『ディアベリの主題による33の変奏曲』、略して『ディアベリ変奏曲』は、1823年に出版されたピアノ作品で、J.S.バッハの『ゴールドベルク変奏曲』と共に、変奏曲史上の最高傑作といわれている。原題は〈33 Veränderungen über einen Walzer von A.Diabelli〉。意図的に〈Ve...
[続きを読む](2013.05.01)