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  •  現代音楽を得意とする指揮者には、総じて知的でクールなイメージがある。彼らが古典派やロマン派の作品を振ると、大抵の場合、音楽の細かい構造が透けて見えるような演奏になる。もやもやしたものが取り除かれ、分かりにくいと感じていたものが分かりやすくなり、クリアーに全体像が見えてくるのだ。 もっとも、明晰で分かりやすい演奏というだけではじきに飽きが来る。我々が音楽に求...

    [続きを読む](2021.04.03)
  •  ハンス・ロスバウトには現代音楽のマイスターというイメージがある。何しろ20世紀の重要作品であるシェーンベルクのオペラ『モーゼとアロン』、ブーレーズの「ル・マルトー・サン・メートル」、クセナキスの「メタスタシス」の世界初演を務めた人なのである。しかし、そのレパートリーは広い。端的に言えば、ラモーからシュトックハウゼンまで手中に収めているのだ。大半はヨーロッパ...

    [続きを読む](2018.05.03)
  • 成熟したヴィルトゥオーゾの遺産 ナタン・ミルシテインはバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」全曲を2度録音している。1967年に出版されたヨアヒム・ハルトナックの『二十世紀の名ヴァイオリニスト』には、ミルシテインが演奏した「シャコンヌ」について、「彼はこの作品の構築とポリフォニーを、透明な追跡可能なものにしている。旋律の内包するものは彼の...

    [続きを読む](2015.03.24)
  • 音による表現のエッセンス アントン・ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための5つの楽章」は1909年に作曲された。作品番号は5。アルノルト・シェーンベルクのもとで研鑽を積んでいた頃、オペラの作曲計画が頓挫した後に起こった創作意欲の爆発を示す傑作である。まだ20代半ばだったヴェーベルンはここで調性的な世界から離れ、音の配列、強弱、音響、そして演奏法を徹底的に吟味し、...

    [続きを読む](2014.07.25)
  • 20世紀に最も絶賛された前衛音楽の一つ ピエール・ブーレーズの『ル・マルトー・サン・メートル(主なき槌)』は、1955年6月18日に初演されて以来、戦後生まれた最も画期的な音楽の一つとして評価され続けている。あのストラヴィンスキーが寄せた「今の新しい時代、真に価値ある唯一の作品」という賛辞を筆頭に、賞賛の言葉は数限りなくある。ここまで多くの人に歓迎され、理解...

    [続きを読む](2011.08.14)
  • その夜、過去のあやまちは浄化される 20世紀から21世紀の今日に至る音楽の流れをさかのぼっていくと、一人の男の名前に行き着く。その男が1923年に考え出した「十二音技法」は音楽界に一大革命を起こし、それまで常識とされていた作曲法、ひいては音楽のフォルムそのものに、大きな変化をもたらした。そして、この作曲フォーマットの誕生以来、これに匹敵するほどの音楽史的事件...

    [続きを読む](2011.03.01)
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