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  • 素人探偵、仁木兄妹の登場 仁木悦子の推理小説には、謎解きの面白さや緊迫感だけでなく、微笑ましい明るさ、軽快さがある。おどろおどろしさで背筋をぞくぞくさせる作風とは一線を画し、端正な文体で物語をテンポよく進行させ、しこりを残さず、あたたかい余韻で読者を包み込む。「探偵役」を務める人物たちも、犯罪者を捕らえてやるという正義感より、隠された謎を知りたいという好奇心...

    [続きを読む](2014.07.19)
  • 社長シリーズ、若大将シリーズ、そしてサスペンスも 杉江敏男は1950年に監督デビューしてから約20年の間に68本もの作品を手がけた東宝娯楽映画の星である。会社の命令により、「芸者小夏シリーズ」「三人娘シリーズ」「お姐ちゃんシリーズ」「社長シリーズ」「若大将シリーズ」「駅前シリーズ」「クレージー作戦シリーズ」といったドル箱映画を確実にヒットさせるべく、杉江は一...

    [続きを読む](2013.05.05)
  •  蒼井雄は昭和10年代に話題になった推理作家である。本名は藤田優三。1909年に生まれ、1975年に亡くなった。作家として独り立ちすることなく、関西配電の技師としてサラリーマン人生を送り、数えるほどしか作品を残さなかった。代表作は『船富家の惨劇』。1936年、これが春秋社の書き下ろし長編募集に一席で入選し、注目を集めた。蒼井を推した審査員は江戸川乱歩である。...

    [続きを読む](2011.10.22)
  •  1952年に監督デビューして以来、会社から言われるままひたすら娯楽映画を撮り続けていた野村芳太郎が、初めてその尖った個性を見せたのは1958年の『張込み』からである。原作は松本清張。映画の大部分を占めるのは2人の刑事が犯人の元恋人宅を見張っているシーン。それが終盤、急展開をみせ、クライマックスへと驀進する。その演出の巧みさといったら、黒澤明の『天国と地獄』...

    [続きを読む](2011.03.17)
  •  今や絶滅した和風美人の代表、新珠三千代。「たおやか」とはこの人のためにある言葉ではないかと思わせるほど、そのたたずまいは楚々としていて、優美で、女らしい。体の線がしなやかで、着物姿のときなど、首がとても色っぽくみえる。一方で洋服もよく似合い、新進デザイナーだった頃の森英恵による衣装を着こなすそのセンスとスタイルの良さは、1950年代の日本女性にはあまり見ら...

    [続きを読む](2011.02.27)
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