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  • トリックで魅せる作品 作者の高木彬光は、『呪縛の家』や『魔弾の射手』などで〈読者への挑戦〉を行っている。1948年に坂口安吾が『不連続殺人事件』で話題をさらった時のように、小説が結末を迎える前に事件の謎を解いた読者に、賞金を出す企画である。『呪縛の家』は連載中に酷評されたこともあり、作者もいきり立ったのだろう、「ここで、最後のヒントを与えましょう。ここまで書...

    [続きを読む](2019.08.04)
  • 天才探偵の登場 高木彬光のデビュー作『刺青殺人事件』で神津恭介が登場するタイミングは完璧だった。密室で他殺死体が見つかり、その後も残虐な殺人が続き、謎が謎を呼び、警察もお手上げ状態となり、ページ数も残すところ4分の1になろうかという時、この美貌の天才探偵が突然登場し、あっけなく密室の謎を解き、真犯人の正体を暴いたのだ。これ以上おいしい登場の仕方はない。謎解き...

    [続きを読む](2019.07.27)
  •  教員志望の同級生に誘われて、塾講師をしていたことがある。1994年4月から1996年3月までの約2年間の話だ。 中学2年生と中学3年生の国語のクラスを受け持っていた。生徒は各16名。授業時間は90分で、1日2コマ。時給は2600円、辞めた時は2900円だった。当時住んでいたアパートから車で50分という遠い場所にあったが、ちょっとした夕食付きだったこともあり...

    [続きを読む](2013.08.10)
  • 実験と娯楽 「なにを始めるかわからないと評判の市川崑」ーー1957年に公開された『穴』の予告編に出てくるキャッチコピーである。これほど市川崑という監督のスタンスをわかりやすく言い表した言葉はない。ベネチア国際映画祭サン・ジョルジオ賞を受賞し、アカデミー外国語映画賞候補にも挙がり、市川崑の名を知らしめた『ビルマの竪琴』。女子大生に睡眠薬を飲ませて犯す場面が話題...

    [続きを読む](2012.10.18)
  •  眠くても、疲れていても、通勤と退勤の電車の中では読書をすることにしている。本を読まないと、会社と自宅を往復するだけの日常で終わってしまうので、少しでも読んで、ハードで荒んだ現実からは得られないものを吸収しておきたいのだ。2011年の初頭までは比較的時間にゆとりがあったので、帰宅してからもまだ読書をする余力はあったが、会社を移ってからは、家に帰った瞬間に思考...

    [続きを読む](2011.12.31)
  •  蒼井雄は昭和10年代に話題になった推理作家である。本名は藤田優三。1909年に生まれ、1975年に亡くなった。作家として独り立ちすることなく、関西配電の技師としてサラリーマン人生を送り、数えるほどしか作品を残さなかった。代表作は『船富家の惨劇』。1936年、これが春秋社の書き下ろし長編募集に一席で入選し、注目を集めた。蒼井を推した審査員は江戸川乱歩である。...

    [続きを読む](2011.10.22)
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