タグ「メンデルスゾーン」が付けられているもの

  • 限りないロマンと情熱 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は1806年に作曲され、同年12月23日に初演された。独奏を務めたのは、当時26歳のヴァイオリニスト、フランツ・クレメントである。作曲の際、ベートーヴェンはクレメントに助言を仰ぐこともあったという。当時のヴァイオリン協奏曲としてはスケールが大きく、演奏時間は40分から45分、第1楽章だけでも20分を超え...

    [続きを読む](2024.04.07)
  • 最後に完成させた交響曲 メンデルスゾーンが交響曲第3番「スコットランド」の作曲に着手したのは1829年、エディンバラのホリールード宮殿を観光している時のことである。当時20歳の作曲者は、悲劇の女王メアリー・スチュアートが住んでいた宮殿で、「スコットランド交響曲の始まりの部分を見た気がした」と家族に手紙で報告している。その12年後、1841年に本格的に作曲を開...

    [続きを読む](2023.07.06)
  • 美しいメロディーがより美しくなる おなじみの作品が新鮮な魅力を放ったり、なじみのない作品が親しげに響いたとき、決して誇張ではなく、芸術の深い部分と調和したような気持ちになる。ペーター・マークはそういう感動を与える指揮者である。新鮮な魅力を放つといっても、それが単に奇を衒ったものなら二度聴けば飽きる。マークの指揮はそうではなく、独特の表現が全て音楽的に響くのだ...

    [続きを読む](2022.06.04)
  • 完璧な演奏 1917年10月27日、ロシアからアメリカへやって来た16歳のヤッシャ・ハイフェッツは、カーネギーホールで初リサイタルを行い、驚異的な成功を収めた。その信じがたいほど完璧な演奏は、当時客席にいた誰もがかつて耳にしたことがないもの、同業者が脅威を感じるレベルのものだったという。 以来、ハイフェッツの名は「完璧」と同義になり、やがて「ヴァイオリニスト...

    [続きを読む](2019.01.04)
  • 一回勝負に賭ける演奏 ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが没入を重んじた指揮者だったことは、遺された録音や映像に接すればすぐに分かる。その手記にも、集中と没頭なき芸術が「芸術全般の悲劇の始まり」であると書かれている。彼にとって、単に楽譜に忠実なだけの演奏は非創造的であり、個性的な審美観を振り回す指揮は疑わしいものであった。「私にとって重要なのは、魂に訴えるか否...

    [続きを読む](2016.10.19)
  • クレンペラーの音楽 木管を強調させるやり方は、クレンペラーが意識して行っていたことである。何しろ「木管がきこえるということがもっとも重要なのです」とまで言い切っているのだ。その傾向が昔からあったことは、1928年に録音されたR.シュトラウスの「7つのヴェールの踊り」を聴くとわかる。これは極めて貴重な音源だ。録音年代を忘れるほど音質が良いこともあり、ぞくぞくす...

    [続きを読む](2016.03.21)
  • 奇蹟の楽想 シューベルトは31歳で亡くなったが、その短い生涯に人が何年生きても書けないような神韻縹渺たる傑作をいくつも完成させた。途方もない音楽的深度を獲得したそれらの作品は、私たちの心の暗部にまで届き、孤独感や苦悩や渇望と呼応し、調和的な余韻で満たす。作曲家に対して共感以上のもの、友情すら感じさせるような親密さと清廉さがその音楽には潜んでいる。 交響曲第9...

    [続きを読む](2012.02.22)
  • 天才は最後にキレた メンデルスゾーンが紡ぎ出す旋律は流麗で、親しみやすく、時折情熱的な力強さや憂鬱な表情を見せることはあっても、取り乱した叫び声となることはない。音楽的な冒険をしても、それは「カッコいい」と思える範囲にとどまり、節度は保たれている。だから紳士淑女が顔をしかめることもない。そういうところをあげつらい、「メンデルスゾーンの作品はお上品で中身が薄い...

    [続きを読む](2011.07.29)
  •  カイルベルトについて語る時に決まって出てくる言葉は「質実剛健」「無骨」といったものばかり。渋いと評する人もいるが、それも褒め言葉ではなく単に「地味」「色気がない」の裏返しとして言っているだけ。これには本人のジャガイモみたいな風采も少しは影響しているのかもしれない。 そのイメージが変わってきたのはワーグナーの『指環』のバイロイト・ライヴ音源が発売されてからで...

    [続きを読む](2011.04.28)
  • 憂愁のロマン クラシックの世界で3大ヴァイオリン協奏曲といえば、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの作品を指す。そこにチャイコフスキーの作品を加えて、4大協奏曲という言い方をすることもある。だが、「3大」とか「4大」といっても、一般的には知名度にかなりの差があるようだ。この中で圧倒的に聴かれているのは、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調(略...

    [続きを読む](2011.03.25)
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