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  • 啓示的に響くコラール  セザール・フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」は1884年に作曲され、1885年1月24日もしくは25日にマリー・ポアトヴァンによって初演された。フランクは若い頃ピアニストとして才能を開花させ、ピアノ曲も書いていたが、25歳の時(1847年)にオルガニストに転向した。それからは他の楽器のために書いた作品をピアノ用に編曲することはあっ...

    [続きを読む](2022.12.04)
  • 自由で多彩な管弦楽の響き ドビュッシーの『海』は1903年8月から1905年3月5日にかけて作曲された。正確な作品名は「海 管弦楽のための3つの交響的素描」。交響詩ではなく、交響的素描である。初演は1905年10月15日、カミーユ・シュヴィヤールの指揮によって行われた。楽譜は同年にデュラン社から出版され、表紙には葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」が使われたが、音楽と...

    [続きを読む](2022.05.03)
  • リヒテルのプロフィール 1955年、戦後初めて鉄のカーテンを越えて訪米したソ連のピアニスト、エミール・ギレリスは、各地でセンセーションを巻き起こし、絶賛された時、こう言ったという。「私のことを褒めるのは、リヒテルの演奏を聴くまで待ってください」ーーこれはギレリスの人柄を表すエピソードであり、2人の優劣を示すものではないが、この発言から西側におけるリヒテル伝説...

    [続きを読む](2021.01.08)
  •  ベートーヴェンの「月光」をアナトリー・ヴェデルニコフほど美しく奏でた人はほとんどいない。この格調高く、内省的な第1楽章を聴いていると、時間や空間の動きが止まって音楽だけがなめらかに流れているような気持ちにさせられる。テクニックは申し分ないが、機械的な冷たさはなく、わざとらしいアクセントもない。演奏者がただ者でないことはすぐに分かる。 かつて名教師・名ピア...

    [続きを読む](2019.05.10)
  • 恋してはいけない美女に恋したファウストの悲劇 リリ・ブーランジェは女性として初めてローマ賞グランプリを獲得し、1918年に24歳の若さで亡くなった作曲家である。幼い頃から病弱だったようで、姉のナディアによると、「彼女は自分の寿命が短く、限られた時間しかないことを自覚していた。今こうしてそれを語る私たちよりも遥かに冷静に、自らの死を予知していた」という。 父エ...

    [続きを読む](2016.02.25)
  • レパートリーの広さ ピエール・モントゥーについて書かれた文章を読むと、ロシア音楽が得意とか、ドイツ音楽が得意とか、母国フランスの音楽が最も得意とか、いろいろなことが書かれている。そこでいつも思う、「果たしてこの人に得意でない作品があったのだろうか」と。実際のところ、レパートリーが広かったことは、遺された音源が証明している。バッハからメシアンまで、時代にも国籍...

    [続きを読む](2015.07.22)
  • 流転のリアリティ 端折った作品といえば、ロシアに漂着した元禄商人・伝兵衛を描いた長編『異郷』(1943年9月)も同様である。これは織田作之助が想像力を自在にめぐらせた二部構成の大河ロマンで、第一部では伝兵衛がイギリス人との決闘で勇者になり、ペテルブルク一番の美女ナターシャが伝兵衛への恋に懊悩する。この展開はいかにも大衆好みだ。彼が日本人として常に恥ずかしくな...

    [続きを読む](2015.05.23)
  • 陶酔の様式 ワンフレーズだけで聴き手を陶酔させる音楽がある。ギョーム・ルクーのヴァイオリン・ソナタはその最たる例で、冒頭の旋律が流れると心がとけそうになる。ゆるやかに下降して上昇するこのフレーズだけでルクーは音楽史に名を残したといっても過言ではない。それほどまでに美しい。 ギョーム・ルクーは24歳の若さで亡くなったベルギー出身の作曲家。1870年1月20日に...

    [続きを読む](2014.06.27)
  • 静かなる霊感の泉 セザール・フランクは作曲家として成功することを夢見ながら、長い間その才能を認められることなく、一オルガニストとして教会に奉職していた。転機が訪れたのは1858年、フランクが30代後半にさしかかってからのこと。サント・クロティルド教会のオルガニストに任命された彼は、即興演奏が評判になったことで自信を取り戻し、1860年から1862年の間に「大...

    [続きを読む](2014.06.02)
  • 宗教と官能 ダンディ、ショーソン、デュパルクの師匠であり、近代フランス音楽の父と言われるセザール・フランク。ベルギー生まれだが、「フランスのブルックナー」と呼ばれていたこともある。 誠実温厚な人柄で、質素な生活を営み、信仰に篤く、教会音楽を数多く手がけ、教会のオルガン奏者として生涯を終えたということもあり、多くの研究者はフランクの作品について説明する際、まず...

    [続きを読む](2011.04.02)
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