文化 CULTURE

花と冒険[考察・エッセイ]

崖に咲く花はなぜ美しいのか

「文化」についてのエッセイ。
テーマは文学、思想、民俗、絵画、漫画、アイドル、ゲーム、玩具、世相...。
ハイカルチャーとサブカルチャーの境も関係なく、流行も関係なく、
日常の死角にある「文化」を語る。

  • スイス出身の大ピアニスト、エドウィン・フィッシャーの著書に『音楽の考察』というエッセイ集がある。邦訳もあり、『音楽を愛する友へ』と題されて新潮社から出ていた(1958年初版)。フィッシャーはこの本の中で、演奏家の心得を述べ、「作曲家が作品を懐胎した時に彼が霊感を受けていた状態に、われわれ自身の身を置くこと」の大切さを説き、合理主義に

    [続きを読む](2019.01.26)
  • 『楚辞』は、前漢の学者劉向が楚の詩を十五編集め、それに自身の詩を加えたものである。その後、後漢の王逸が『楚辞』に注釈を付し、自身の詩を加えて『楚辞章句』を編纂した。現存している最古の『楚辞』は、『楚辞章句』である。この詩集で最も大きな存在感を示しているのが、屈原である。懐王に仕える政治家であった屈原は、同輩の嫉妬と憎悪の対象となり讒言され、

    [続きを読む](2018.12.22)
  • 山上憶良の歌で最も広く知られているのは、教科書にも載っているこの一首だろう。山上憶良臣の宴を罷る歌一首 憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ それその母も 吾(あ)を待つらむそ(私憶良はもう失礼いたしましょう。子どもが泣いているでしょうし、その母親も私の帰りを待っていることでしょうから)言うまでもなく、万葉集には名歌が多数収録されている

    [続きを読む](2018.11.17)
  • 「時こそが神なのではないかという考えに、ぼくは常に執着していた」とはロシア出身の詩人ヨシフ・ブロツキーの『ヴェネツィア 水の迷宮の夢』に記された言葉である。時こそが神である。その前提で戯曲『大理石』を読むと、「おれたちにとってただ一人の観客は、時間なんだ」や「自分を時間に似せたいと本当に思っている」といった台詞に深い意味が加わる。

    [続きを読む](2018.10.20)
  • ここでは『彼岸過迄』の約三分の一を占める「須永の話」で語られた内容を検討する。田口の娘で、須永市蔵とは従妹の関係にあるヒロイン、千代子の後ろ姿を見ただけで興味を抱いた敬太郎は、須永と千代子を「結び付ける縁の糸を常に想像」するようになり、須永が千代子のことをどのように考えているのか聞き出す。そして須永の隠されていた感情にふれ、従兄妹が心理的な作用を及ぼし合い、

    [続きを読む](2018.09.22)