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2012年のモーニング娘。をたのしむ [続き]

2012.07.14
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 9期と10期のメンバーは、2011年に加入したばかりなので、その才能には未知の部分が多い。私自身、ほぼ知らないに等しい状態にある。ただ、ある舞台を観て、個々の表現力の片鱗をうかがうことはできた。大槻ケンヂ原作の「ステーシーズ 少女再殺歌劇」である。話の山場が分散しているため、一度観ただけでは流れが掴みにくかったものの、各メンバーが頼もしい存在感を発揮し、ある者は演技で、ある者は踊りで、ある者は表情で魅せてくれた。
 目立っていたのは、メインキャストを演じた田中れいな(6期メンバー)、鞘師里保、工藤遥。この3人は適材適所で、役にはまっていた。それ以外では、ほとんど作為を感じさせず、ある意味無心に「砂也子」として舞台に存在していた石田亜佑美と、それとは逆のアプローチで役に入り込もうと心を砕いていた生田衣梨奈が印象に残る。とはいえ、最も胸に迫ったのは河相我聞の熱演だったが。

 ところで、モーニング娘。は現在どのようなステータスにあるのか。その判断材料のひとつとなるのが、動画サイトの公式チャンネルである。「One・Two・Three」の「Dance Shot Ver.」がアップされたのは6月4日のこと。再生回数は1週間ほどで100万回、1ヶ月ほどで200万回に達した。大変な勢いである。
 「Dance Shot Ver.」の動画は、しばらくの間、アクセスしても一向に読み込まない状態にあったため、観るのを断念した人もいると思う。この期間、動画広告も本編動画も非常に重かった。本当ならもっと多くの人に観られていたかもしれない、と考えると少し残念である。こういう不具合は、長期にわたるアクセスの集中によって起こるのだろうか。そうだとしたら、モーニング娘。が再生数ランキングにほとんど登場しなかったのは、疑問である。何かほかの理由があるのかもしれない。CDが発売される直前も、動画に寄せられる応援コメントが無差別的にスパム扱いされるなど、荒れ野のような状況に陥っていた。注目する人が増えれば、それを面白く思わない人も増える。だから別に何があっても驚きはしないが、ただ、妙な真似をしても、このグループのファンには逆効果だろう。

 50thシングルの特典イベントとして、チェキ会やランダム個別握手会をとりいれたことも、一部で話題になった。発売前に動画サイトで楽曲を公開しているわけだし、ほかのアイドルとは「ランキング」という厄介な土俵で競わなければならないのだから、何かしら策を講ずるのは当然のことである。もっと別の方法はないのだろうか、とも思うけど、この流れを変えるのは容易ではない。
 ただ、モーニング娘。のコンサートが好きな者としては、そういったイベントが増えることで、日頃の練習にかける時間やエネルギーの比重が減り、コンサートの質に影響を与えるのではないか、と余計な心配をしたくなる。私はこれまでモーニング娘。のライヴを観て、「観なければ良かった」と思ったことは一度もない。今後も、練習の成果や成長の軌跡がはっきりとみえるようなコンサートを続けてほしいものである。

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 先日、ソロになった新垣里沙の主演舞台「みのり」を観に行った。2012年5月に生放送されたラジオドラマ「想い彩り」でも感じたことだが、彼女の演技力はどのようにして育まれたのだろう。モーニング娘。時代の新垣には女優としての活動が多かったという印象はない。それなのに、下地がしっかりしている。今回もそれを確認することができた。
 新垣の役は、母親の恋人に心惹かれる地味な女子。引きこもり気味だが、内気なわけではない。自分の意見もきちんという。新垣自身、インタビューで語っているように、母親の恋人に心を開くのも意外に早い。だから、前半と後半で「主人公はここまで変わった」といえるほど、劇的なギャップをつけるのは難しい。そういう難しさが伝わりにくい難役である。私が観たのは2日目。新垣はテンポよく演じていたが、まだどこか役に対して構えているようにもみえた。何にしても、女優人生は始まったばかりである。これからどんどん自分を壊すような感情表現を会得していくことだろう。

 こういう才能が高いレベルで実っていく場面に立ち会うことができるのも、モーニング娘。を観察するたのしみのひとつだ。このグループに興味を持った当初は、過去のモーニング娘。に気付かなかったことを悔やんだものである。しかし、とにかく今、「新しいモーニング娘。」の活動を目にすることができているし、そのことに喜びを感じている。
 モーニング娘。がテレビや新聞でまともに取り上げられないことにストレスを感じたこともあるが、マスコミにはマスコミの都合がある。そういうものをあてにしても仕方がない。あてにしなくても、モーニング娘。を発見ないし再発見する人は徐々に増えている。私もその一人として、自分の判断で、「良いものは良い」というだけである。後になって、なぜあの時モーニング娘。に気付かなかったのかと悔やむことは、もうないだろう。
(阿部十三)

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