タグ「シューベルト」が付けられているもの

  • ベートーヴェン弾きとして ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、モノラルとステレオの2種類ある。前者は1950年から1954年、後者は1959年から1969年にかけて録音された(「ハンマークラヴィーア・ソナタ」は除く)。演奏に関しては、モノラル盤の方が構築的である。ピアニッシモの美しい音色や聴き手に違和感を与えないアゴーギクの妙技も、神経質すぎない程度に磨か...

    [続きを読む](2017.03.13)
  • 何もかもが音楽的 ヴィルヘルム・バックハウスは「鍵盤の獅子王」と呼ばれたドイツのピアニストで、ベートーヴェンやブラームスを得意としていた。質実剛健、謹厳実直と言われることが多いが、その音楽性は決して堅苦しいものではなく、聴き手に息詰まるような緊張を強いるものでもない。むしろ、すぐれた音楽作品に封じ込められた神秘をあっさりと解き放ち、難解さやいかめしさとは異な...

    [続きを読む](2017.03.10)
  •  アーリーン・オジェーの歌声は心を洗う光、雑念を消す光である。まさしく真の美声だ。普通の歌手なら中年にさしかかるあたりで声が重くなったり固くなったりして、高音の出し方にも力みが感じられるようになる。しかし、オジェーは表現の幅を広げることはあっても、気品と透明感のある美声を失うことはなかった。彼女はそのキャリアの中で、厳密な意味で「衰えない」という奇跡を積み重...

    [続きを読む](2015.10.23)
  • ピアノ・ソナタの詩情 シューベルトのピアノ・ソナタの中で最高傑作と評されることが多いのは、第21番である。これに対して異論を唱える人はほとんどいないだろう。私自身も最初はこの晩年の作品に魅了され、シューベルトのピアノ・ソナタを聴くようになった。ただ、私が無性に惹かれたのは第21番の第1楽章であり、ほかの楽章がそこまで自分の心に深く浸潤したかというと、やや疑わ...

    [続きを読む](2015.04.10)
  • 楽想は深淵の傍に シューベルトの音楽を聴いていると、必ずと言っていいほど楽想というものに考えが及ぶ。彼はひとつの作品の中にさまざまな楽想を織り込み、それらを有機的につなげることで、えもいわれぬ美の世界と独創的な構成を獲得した。その作品では、次から次へと美しい楽想があらわれ、こともなげに連鎖する。たとえそれが理論上異質な要素であっても、同じ空気の中で結合し、包...

    [続きを読む](2015.01.09)
  • 音による表現のエッセンス アントン・ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための5つの楽章」は1909年に作曲された。作品番号は5。アルノルト・シェーンベルクのもとで研鑽を積んでいた頃、オペラの作曲計画が頓挫した後に起こった創作意欲の爆発を示す傑作である。まだ20代半ばだったヴェーベルンはここで調性的な世界から離れ、音の配列、強弱、音響、そして演奏法を徹底的に吟味し、...

    [続きを読む](2014.07.25)
  • 『アイズ ワイド シャット』について 『アイズ ワイド シャット』は当時結婚していたトム・クルーズ、ニコール・キッドマンを起用したR-18指定作品で、キューブリックの遺作である。舞台は宇宙、無人ホテル、戦場といった極限的なものではなく、日常の世界だ。その日常の死角にある陥穽にはまり、一人の男が悪夢を体験する。 主人公ビル(トム・クルーズ)は腕利きの医者で、美...

    [続きを読む](2014.01.16)
  • 憧れはいつまでも 私にとってシューベルトは、憧れと諦めの感情を最も刺激する作曲家である。とりわけ死の年に書かれた作品を聴くと、もう手の届かない憧れに想いを馳せ、甘くて痛い喪失感の中にこの身を浸したくなる。その音楽は絶美だが、無菌質ではない。親しみと孤独が手を取り合った世界から生まれる美しさである。 ヴァイオリンとピアノのための幻想曲は、シューベルトが晩年に書...

    [続きを読む](2013.03.16)
  • 数々の名盤 名指揮者と呼ばれる人で「ザ・グレイト」を録音(ライヴ録音も含む)していない人は、ほとんどいない。裏を返せば、それだけ指揮者にとって自分の個性、技術、工夫を投影しやすい作品なのだろう。私の手元にも50種近くのCDがあり、我ながらよくここまで集めたものだと呆れている。 中でも愛聴しているのは、以下の5種である。・ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮、...

    [続きを読む](2012.02.23)
  • 奇蹟の楽想 シューベルトは31歳で亡くなったが、その早すぎた晩年には人が何年生きても書けないような神韻縹渺たる傑作をいくつも完成させていた。具体例を挙げると、歌曲集「冬の旅」、弦楽五重奏曲、ピアノ・ソナタ第21番、ミサ曲第6番、ピアノとヴァイオリンのための幻想曲、交響曲第9番「ザ・グレイト」などがそれにあたる。途方もない音楽的深度を獲得したこれらの作品は、先...

    [続きを読む](2012.02.22)
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