音楽 CLASSIC
  • 明るく、無邪気なモーツァルトしか知らない人は、悲しみ悶え苦しむ「短調のモーツァルト」の存在を知った時、少なからず驚くに違いない。生活の匂いを感じさせない、まるで天使が書いたような長調の作品は、モーツァルトが〈神の子〉であったことを伝えているが、暗い情熱が波打つ短調の作品は、モーツァルトがまぎれもなく苦悩する〈人間〉であったことを伝えている。そして、多くの人が...

    [続きを読む](2011.06.29)
  • 国内最大規模のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」で、もしテーマがショスタコーヴィチになったらどうなるのだろう、と時々想像することがある。異様な熱気に覆われている会場内。モーツァルトやショパンの時は家族や恋人たちの憩いの場だったのに、「政治と芸術」「革命」を論じ合う場と化す屋外の休憩所。平年の数倍の割合を占める男性客。おそらく赤字になるが、...

    [続きを読む](2011.06.22)
  • ひとつ忘れられない思い出がある。2006年11月、サントリーホールでモーツァルトの交響曲第39番、第40番、第41番を聴いた時のことだ。3作とも有名すぎるほど有名な作品である。それをウィーンフィルが演奏する。こちらはさぞ魅惑的なモーツァルトが聴けるのだろうと期待する。しかし指揮者はアーノンクール。普通の演奏はしないだろう、という不安にも似た予感がふと脳裏をよ...

    [続きを読む](2011.06.18)
  • 1年以上前のこと、あるコンサートの告知に目が釘付けになった。ニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによるJ.S.バッハの『ミサ曲ロ短調』。会場はNHKホール。公演は2010年10月に行われるという。私はチケットの発売日を確認し、発売初日に購入した。キャッチコピーは「アーノンクール最後の来日公演!」ーーこういう類の宣伝文句は(本人...

    [続きを読む](2011.06.17)
  • 昔々、ペルシアの王様シャハリアールは、妃の浮気がもとで女性不信に陥ってしまいました。王様は妃を殺してしまうと、それ以来、毎日のように城下から娘を連れてこさせました。一晩だけ過ごして、殺すためです。ある日、大臣の娘シェヘラザードが差し出されることになりました。しかし、彼女はほかの娘とは違いました。知性に富んだ彼女は、王様の寝室で好奇心をそそるような物語を聞かせ...

    [続きを読む](2011.06.12)
  • 戦前から戦中にかけて海外でその実力を認められ、高い評価を得ていた世界的ヴァイオリニスト、諏訪根自子(すわ・ねじこ)。おそらく彼女の名前を見て胸を熱くするのはかなり上の世代だろう。諏訪のファンだった城山三郎は「日本が初めて生んだ知的な美人という気がした」と述べていたそうだ。たしかに綺麗な顔立ちである。一目でそれと分かる美人ヴァイオリニスト。ただ、音楽的にはどう...

    [続きを読む](2011.06.07)
  • チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番といえば、あらゆるピアノ協奏曲の中で最も有名な作品ではないだろうか。冒頭でホルンが奏でる主題を聴いたことがないという人はおそらく一人もいないはずだ。いかにもロシア的なスケールの大きさを感じさせる名旋律である。序奏部のクライマックスで、グランドピアノとオーケストラが一体化してこの旋律を奏でる時、つくづく「名曲」と思わずにいら...

    [続きを読む](2011.06.03)

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