音楽 CLASSIC

ラウタヴァーラ 『カントゥス・アルクティクス』

2013.11.15
北極圏の鳥たちとオーケストラの融合

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 『カントゥス・アルクティクス』は、フィンランドの世界的作曲家、エイノユハニ・ラウタヴァーラの代表作である。作曲されたのは1972年。フィンランドのオウル大学の大学祭のために書かれ、ウルホ・ケッコネン大統領に献呈された。副題は「鳥と管弦楽のための協奏曲」という。

 フィンランドといえば誰もがまずシベリウスを思い浮かべるだろうが、ラウタヴァーラはシベリウス以後のフィンランドを代表する作曲家で、2013年の今も現役である。
 1928年10月9日、ヘルシンキに生まれたラウタヴァーラは、シベリウス・アカデミーでメリカントに作曲を学び、1950年代にアメリカ、ドイツに留学。その間、新古典主義や十二音技法の影響下で作曲していたが、次第に神秘主義的な傾向を強めてゆき、独自の作風を確立した。『カントゥス・アルクティクス』はその独自色を鮮烈に打ち出した頃の傑作であり、『真実と偽りのユニコーン』などと共に高く評価されている。

 副題に出てくる「鳥」は、正確には「テープに録音された鳥の鳴き声」のことである。ラウタヴァーラはテープレコーダーを持って鳥の群れがいる沼沢地へ赴き、様々なタイプの鳴き声を録音した。そして、その音源をオーケストラの生演奏と同期させることで、幻想と現実の境界があやうくなるような無辺の世界を創り出すことに成功したのである。
 オーケストラが描く旋律もほれぼれするほど美しく、鳥たちの声と有機的な調和をなし、無数の白鳥が飛び立つ終楽章のクライマックスでは一種の無限旋律のような様式を形成している。ちなみに3楽章構成で、第1楽章は「湿原」、第2楽章は「メランコリー」、第3楽章は「白鳥が渡る」と題されている。

 演奏によって音楽的効果が大きく変わる作品ではないように思われそうだが、実際にはそんなことはなく、オーケストラの力量次第で「自然の音」に不自然な陰影をつけてしまうケースもある。そういう演奏ではサウンドトラックを聴いているような気分にしかなれない。その点、レイフ・セーゲルスタムが指揮した録音は、鳥たちの映像が目に浮かぶだけでなく、幻想的な世界に束の間トリップさせてくれる。とはいえ、録音の種類が限られているので、もっといろいろな指揮者に取り上げてもらいたいところだ。


【関連サイト】
カントゥス・アルクティクス(CD)
エイノユハニ・ラウタヴァーラ
[1928.10.9-]
『カントゥス・アルクティクス』 作品61

【お薦めディスク】
レイフ・セーゲルスタム指揮
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2004年

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